１２月の★ハッピーバースデー｜リアクション

１２月の★ハッピーバースデー

★後木真央のＢＤ（須藤清一郎／椿美咲紀／常闇月／八神修）

　その日の放課後、新聞部の話し合いは佳境を迎えていた。

「今月の１面は非リア特集が毛色が違って面白いと思うのだ♪」
　後木真央は、部室の机をパンと叩く。彼女の提案に八神修、椿美咲紀、常闇月の３人はちょっと意味ありげに視線を交わした。修が腕時計をちらりと見る。
「うん、なかなか面白い提案だな、真央。でも今回は冬のレジャー特集でいこうかと思ってるんだ」
　ニャッ！　と真央の瞳が見開かれる。
「冬のレジャーなんて、まさにリア充……！　非リア特集破れたりなのだ！　で、でもみんなリア充でも許すのだマヂなのだ～！」
　今度は突っ伏してバンバンと机を叩く真央。美咲紀が慌てて「そんな事ないですよ真央ちゃん！」ととりなすのを不思議そうに見守る月。と、突然ガバッと真央が起き上がった。
「そうだ！　クッキーを配るのを忘れてたのだ！」
　真央はカバンをごそごそ漁ると、「メリクリメリクリ♪」と言いながら、３人に可愛らしくラッピングされた小さな袋を渡して回る。その透明の小窓から、猫型の可愛いクッキーが覗いていた。椿と月が驚きながらも口を開いた。
「わぁ、ありがとう真央ちゃん！」
「ありがとうございます、後木さん。でも、何故……？」
　月の言葉に真央がきょとんとする。
「え？　今日はクリスマスイブイブだからなのだ。……これ部活のクリスマス会じゃないのだ？」
　真央の言葉に３人は顔を見合わせる。修が美咲紀と月に軽く頷いてから真央に言った。
「クッキーありがとな、真央。でも取りあえず編集会議も終わってないし、続きは俺の家でしないか？　もう遅いから部室を出ないとまずい」
　修の言葉に真央はニカッと笑って答えた。
「わかったのだ！　時間はあるのだ修ちゃんちに遊びに行くのだ～」
　美咲紀が嬉しそうに続く。
「そうと決まれば早く行きましょう！　ふっふっふ、準備は万端なのですよ～！」
「準備？」
　不思議がる真央に、はっと口を押さえる美咲紀。そこに冷静に月が割って入った。
「さ、行きましょうか後木さん。まだどんなレジャーにするかも決まっていませんから早く話し合わないと」
「そうなのだ！　真央ちゃんが得意なのは……」
　楽しそうに話し出した真央を促しながら、月は美咲紀に向かって軽く目配せした。美咲紀は月に（ゴメン！）と目をつぶり手を合わせる。２人が先に部室を出たのを確認してから、修は美咲紀のおでこをコツンと軽く叩いた。
「美咲紀、気を付けてくれよ」
「ご、ごめんなさいですシュー君。嬉しくてついつい」
　眉を八の字にする美咲紀に修はふっと微笑んだ。
「先に行っててくれ。俺はもう１人連絡を取らないといけない」
「ラジャーなのです！」
　笑顔で敬礼をして出て行く美咲紀を見送ると、修はスマホを取り出した。
「あいつ、ナンパに忙しくて今日の事忘れてないだろうな」

　修の呟きに（失礼な！　さすがに覚えとるわ！）とどこかで誰かが関西弁でツッコんだ。