蜜より甘い夢の味！？｜リアクション

蜜より甘い夢の味！？

　そこは、深紅のイチゴが愛らしくも妖しく群生する秘密の園。
　イチゴな庭園の主は、白亜の長椅子に腰を下ろしたミッシェル・ナイスゲイだ。

「おほほほほほほ！　皆で仲良く連ケツよ～ん♪」
　なんて、ミッシェルはご機嫌。超ご機嫌。
　何故ならば、ミッシェルの庭にはイケメン男子がずらりと勢揃い。
　それはもう、選り取り見取りというやつなのである。
　これでテンションが上がらないなんていうことがあるだろうか。いや、ない！
　ちなみに、ミッシェルの脳裏には先ほどから花を探し出し損なわなくてはという予感があるのだが、
「そんなの無視よ無視！　イケメンがパラダイスできゃっきゃうふふよ？　いや～ん、堪らないわ～ん！」
　という具合で、花を潰すなんてこと歯牙にもかけないミッシェルなのであった。予感が泣いている。
　だって、ミッシェルに言わせれば、自らこの幸せを壊しにかかるなんてあり得ないのだ。
　人間の本能に漢女（と書いてオトメと読む）の欲望が勝利した歴史的瞬間である。
「ねえ、よそ見しないで。マイエンジェル」
　ミッシェルの傍らに超至近距離で腰掛けていた黒崎俊介先生が、魅惑のヴォイスでミッシェルを誘惑する。
　ミッシェルの耳元に囁きを零す黒崎先生、何故か胸元がこれでもかとはだけていたり。
「あらん、俊介ちゃんったらダ・イ・タ・ン♪　その逞しい身体でアタシを抱きしめて～ん！」
「またそんな可愛いことを言って。離さないよ、僕の子猫ちゃん」
　とび込んでおいで、とでも言わんばかりに両手を広げる黒崎先生。
　あっ、ちなみにこれ、ミッシェルの妄想炸裂ドリームの登場人物ですからね。
　本物の黒崎先生の意思とは一切関係のない言動であることをご了承ください、はい。
　閑話休題、ミッシェルが、一も二もなく黒崎先生の胸にダイブしようとした、その時である。
「……私のことを忘れていないか？」
　ミッシェルのひらふわ桃色ドレスの裾を、反対側に座っているイケメンがくいと引いた。
　振り向いたミッシェルを小動物のようにいじらしく見つめてくるのは桐島義弘先生。
　なお、本物の桐島先生の意思とはやっぱり以下略。
「忘れてなんかいないわよ～ん！　アタシが桐島センセのことを、ないがしろにするわけないじゃな～い♪」
「本当か？　……それなら、いい。私のことをちゃんと見てくれ」
「ああん、そんな可愛いこと言われたら眼鏡にかけたくなっちゃうわん♪」
　何を、とか聞いてはいけない。いいか、絶対に聞くなよ。
「ふふ、僕のことも忘れないでほしいねぇ」
　ミッシェルの前にかしずくのはウォルター・B先生。
　愛しのミッシェルを射抜く青の瞳は熱っぽく潤んでいるが、本物のウォルター先生の意思とはこれも以下略。
　夢世界のウォルター先生は、硝子の器から艶やかに煌めく一粒のイチゴを手に取るや、
「ほら、あーんして」
　と、甘い果実を口に軽く食んでミッシェルへと顔を近づける。
「や～ん！　ウォルターちゃん、白い魔弾をアタシの中に放って～ん♪」
　白い魔弾という比喩がこの文脈では何を指すかというのは考えたらいけないぞ！
　イチゴ口移しからの濃厚なキッスを味わって、満足げにペロリと唇を舐めるミッシェル。
　そんなミッシェルへと、後ろから腕を絡めるのは天利二十だ。
　例によって本物の二十の意思とは以下略なのだが、夢の中の二十はミッシェルに甘く囁く。
「俺の相手はしてくれないのか？」
　なんて、ミッシェルをきゅんきゅんさせて止まない二十の声で言われてしまうと、
「ああ～ん！　もう、ナイスゲイ汁ぶっしゃーっ！　だわ～ん！」
　と、ミッシェルのテンションは倫理という名の天井を突き破る勢いで急上昇。
　もう、２人の間を遮る長椅子なんてぶっ壊して、今すぐにでもくんずほぐれつ、愛を確かめ合いたい！
　今にも長椅子ごと二十を押し倒さんばかりの勢いで振り返れば、目に映るは真っ赤な薔薇。
　二十の胸元を飾るそれは、ミッシェルに今一度意識の隅に追いやられていたあの予感を思い出させるが、
「そんなの関係ないって言ってるのよん！　二十ちゃんの薔薇を潰すなんて、とんでもないわん！」
　ゲスの極み漢女でも良いじゃない！　と、ミッシェルの欲望はまだまだ止まらない。
　というか、ものすごい勢いで加速と暴走を続けるばかりなのだった。
　甘美な夢の続きは、ミッシェルの胸の中に……ということにしておきたい。
　ちなみに寄生植物は、生まれて初めての胸やけに似た症状を感じながらも、ミッシェルの夢から生まれるエネルギーを宿主の（不本意な）目覚めの時まできちんと食べ続けたそうな。

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蜜より甘い夢の味！？

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