ふうわり、甘い香が鼻孔をくすぐる。
その日、
志波 武道の手首に『咲いた』のは、眩しいほどに鮮やかな黄色の花だった。
「え、え、え? ちょ、何コレ!? ドウイウコトナノッ!?」
明らかに異常な状況だと、武道は懸命に思考を働かせようとする。
しかし、朝の森を霧が満たすが如くに、頭の奥がぼんやりと曇っていて考えが少しも纏まらない。
状況を僅かなりとも動かしたのは、声だった。
「ったく、また厄介なものが寝子島に現れたみたいだな」
どこからともなく聞こえる
テオドロス・バルツァの声は、うんざりしたような色を帯びている。
その花は神魂の影響で繁殖し始めた寄生植物だと、テオは言った。
宿主を永い眠りに導いて、どこまでも続く幸せな夢を養分として成長。
やがては、宿主の精神も身体も食い散らかす魔性の花なのだと。
「って、いやいやいやいや! それってかなりヤバいやつなんじゃ……!」
頭に響くごく冷静な声へと思わず声に出してツッコミを入れる武道。と、その瞬間。
「!?」
がくり、身体から力が抜けるのを感じたと思った時には、武道は膝から崩れ落ちていた。
身体が動かない。意識が、誘われるようにどこかへと遠ざかっていく。
「いいか、夢の中に花を探せ。その花を毟り取るなり踏み潰すなりすれば、寄生植物も力を失う――」
(花……花を、さがし、て……)
そうしてそのまま、武道の意識は、
落ちて、
落ちて、
落ちていく。
――狂おしいほど甘美な、蜜の如き夢の底へ、ようこそ。
お世話になっております、巴めろと申します。
このページを開いてくださってありがとうございます!
志波 武道さん、ガイドへの登場誠にありがとうございました!
なお、もしこのシナリオにご参加いただける場合ですが、
ガイドは一例ですのでご自由にアクションをかけてくださいませ。
このシナリオの概要
神魂の影響で、危険な寄生植物が寝子島に繁殖し始めてしまいました。
今はまだ宿主にされてしまった人間はごく少数で、PC様はそのうちのひとりとなります。
寄生されると宿主の身体のどこかには花が咲き、
宿主を覚めない眠りへと誘って、『その人にとっての幸福な夢』を永遠に見せ続けます。
寄生植物はその夢のエネルギーを養分として成長を続け、
最終的には宿主の身も心も蝕み切って遂には命までも奪ってしまうようです……。
リアクションは、寄生植物が見せる夢の中からのスタートです。
PC様は、自分が今いるのが夢の中の世界だとは気づけませんが、
テオの言葉が心の片隅に残っているのか、あるいは本能的なものか、
『花を探し出して損なわなくてはいけない』ことを、その理由まではわかりませんが感じています。
但し、『それを果たせば今の幸せが終わってしまう』ということも何となくわかっています。
『幸福な夢』に抗って、夢の世界に咲く花をぐしゃりと駄目にしてしまうのが目的です。
夢の中に咲く花を毟るなり潰すなりすれば現実の寄生植物も消滅するので、
PC様はこの世界が夢の世界だと思い出した上で、無事に目を覚ますことができます。
なお、寄生植物たちは全てがひとつ・ひとつが全ての運命共同体ですので、
自分に寄生した個体を倒すことが、そのまま寝子島の平和を守ることに繋がっていきます。
また、万が一PC様が完全に夢に囚われてしまい目的を達することが叶わなかった場合ですが、
前述の通り寄生植物たちは他の個体と運命を共にしておりますので、
他のPC様方が多数の寄生植物を倒すことで目が覚める可能性もありますが保証はございません。
ちなみに、テオが世界をぱぱっと切り分けてくれているので、
PC様が眠っている間の現実世界の状況など、細かいことは気にしなくて大丈夫です。
寄生植物が見せる夢について
寄生植物は、宿主に『その人にとっての幸福な夢』を見せる力があります。
夢の内容は、PC様にとって幸せなものであれば基本的に自由です。
戦うのが好きならば永遠に続く戦いの世界というのもアリですし、
大切な人と一緒に何気ない時間をまったりと過ごすというのもOKです。
また、明るい未来の夢も、戻らない過去の夢も、現実では叶わなかった夢も、ご自由に楽しんでいただけます。
甘い結婚生活を夢見るもよし、今はもう出会えない人や場所を描くもよし、あり得なかった『今』を望むもよし。
アラビアン調のハーレムの主や童話のプリンセスになって幸せに暮らす夢など、
現実離れした夢を見ていただくのも何の支障もございません。
また、アクションの文字数が足りない! ということが起こり得るかと存じます。
指定がない部分はアドリブで補完させていただくことになりますので、
ここは絶対に外せない! という部分は必ずアクションにてご指定くださいませ。
指定少なめ・アドリブ多めや、夢の世界や花の位置の詳細はお任せ希望! という場合も、
気合を入れて楽しく執筆に当たらせていただきますので、その旨ご記入いただけますと幸いです。
注意点といたしましては、
1)夢の中に他のPC様を登場させることはできません。
2)NPC(例:登録NPC・遠くで暮らす家族(非PC)など)は夢の世界に登場させることが可能です。
但し、彼や彼女たちはあくまでも夢の世界の登場人物ですので、
現実のNPCとこのシナリオ内で起こった出来事を共有することはできません。
また、彼や彼女たちは基本的にはPC様の希望に沿った行動をいたしますが、
場合によっては、マスタリングさせていただくこともございますことご了承ください。
※登録NPC以外のNPCについては、口調が分かるようにしていただけますとよりイメージに添えるかと。
(指定がない場合は、こちらで口調を設定させていただく場合がございます……)
3)今回、GAによる夢の共有はできません。
また、夢の世界のどこかには必ず前述の花が咲いています。
夢の世界の住人が花を潰すのを止めようとすることもあり得ますが、無事のご帰還を願っております。
花の色や種類などは、任意のものでOKです。
それでは、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!