推理ゲーム『ねこじま人狼』｜リアクション

推理ゲーム『ねこじま人狼』

● 裁判

「時間です」
　時計を見ていたエムアが告げた。

　議論の後半、三人の占い師のうち卯木衛が『狂人』であると主張を翻し、それによって、衛が人狼だと主張していた八神修の立場も好転した。『らっかみ』だと名乗り出たのは屋敷野梢ただひとりであったのでこれを信じるとすると、四方堂真矢かサキリ・デイジーカッターのいずれかが真の占い師であり、彼らが占いの結果人狼だったという齋藤智照、木次要のいずれかは人狼である公算が高くなる。だが、怪盗が最後まで名乗り出なかったのは、島民チームにとっては不利な事態だ。もし怪盗が人狼と交換したのだとすると、占いの結果も当てにならず、むしろ占い師の中に元怪盗の人狼がいる可能性すらある。
　絞るに絞り切れぬ。
　盤面はそのようなややこしい状況であった。

「それでは、彼の者こそ人狼、と思う人物をそれぞれ指差してください」
　ゲームマスターのエムアの指示で、議論を尽くした１０名のプレイヤーは一斉にこれぞと思う人物を指差す。
　真矢を信じるか、サキリを信じるか。
　それともまったく別の可能性を視野に入れるか。
　人々は指差す。

　木次要は、四方堂真矢を。
　四方堂真矢は、齋藤智照を。
　卯木衛は、屋敷野梢を。
　大天使天吏は、サキリ・デイジーカッターを。
　志波武道は、サキリ・デイジーカッターを。
　齋藤智照は、木次要を。
　サキリ・デイジーカッターは、木次要を。
　屋敷野梢は、齋藤智照を。
　九杜アメは、卯木衛を。
　八神修は、木次要を。

「なるほど、なるほど……！」
　エムアはくすっと笑った。
「意見が分かれましたね。真矢さん、梢さん、衛さんに一票ずつ。サキリさんと智照さんが二票ずつ。そして……」
　みなの視線が要に集まる。
「要さんが三票。……結果、処刑されるのは木次要さんです」

　要は伏せていた瞳をゆっくりと上げる。
「私……？」