クリスマス・プレゼント｜リアクション

クリスマス・プレゼント

【小山内海の場合】

（何を買おうかな？）
　緑や赤や金色が華やかにちりばめられたある雑貨屋で、海は楽しく考えていた。

　驚いた御剣刀の言葉。海は思わず『刀くんがくれるものなら何でも』と伝えた。何かを催促するのは気が引けたからというのもある。でも、それが本音でもあった。刀くんがくれる物なら、私は何でもいいに決まってる。
　ああ嬉しいな。海はにこにこしてしまう。俄然クリスマスが自分の中で華やかな音を奏でくるくると踊り出す。楽しみなクリスマス。それなら自分もプレゼントを用意しないといけないという訳で、海は雑貨屋にプレゼントを選びに来たのである。

　刀くんと橘千歳ちゃん。２人が喜びそうな物ってなんだろう。
　棚に飾られてるスノードームを手に取りながら海は考えていた。小さく丸い世界にキラキラと雪が舞い降りる。
　気に入る物は違ってくるだろうし、別々な物の方がいいのかな？　けれど３人でお揃いというのもいいかなぁって思うし。
　色々考えながら店内を見て回る。何がいいだろうか。
　置物？　うわぁ、この置物、妖精さんが棚に腰掛けられるやつだ。可愛い！　小物入れ？　え、これ、サンタさんが入ろうとしている家に小物入れられるんだ。考えてるなぁ。
　たくさんの可愛い物達に、現役女子高生の海は目移りしてしまう。華やかな雰囲気の中色々見て回るのはとても楽しかった。

　けれど。海は手にしていた絵皿をそっと棚に戻した。
　可愛い物、楽しい物、たくさんある。けれど、２人の顔を思い出すと、何か正直しっくりと来なかった。
（他のお店に行こうかな……）
　海は店の出口に向かおうとして、ふとその足を止めた。何かが海の目に入ったのだ。目の端に入ったそれを確認しようと振り向き、海はその瞳を輝かせた。
（―――これだ！）

　それは、三毛、黒、茶の猫が描かれている、３つでお揃いの白のマグカップだった。
　うわぁと海は棚の前に屈み込む。３匹の猫はそれぞれ可愛く、マグカップの中でのんびりと楽しそうだ。
　海は３人がそれぞれこのマグカップを使って家でくつろぐ姿を想像してみる。何だか離れていても３人で過ごしている様で嬉しくなってくる。これなら実用的だし、きっと２人とも喜んでくれるに違いない。
　海はお店のカゴに３つのマグカップをそっといれ、レジに向かった。

　２人へのクリスマスプレゼント。私へのクリスマスプレゼント。大切な人達と、お揃いのマグカップ。何をいれて飲もうかな？