クリスマス・プレゼント｜リアクション

クリスマス・プレゼント

「うわ、すごい！　当たったー！！！」

　ロベルト・エメリヤノフは自室で宝くじを握りしめ、叫んだ。
　何の気はなしに買った宝くじ。１等とかではないが、わざわざ銀行の窓口まで行って引き換えなければいけないくらいの金額を、ロベルトは当ててしまったのだ。
　どうしよう、どうしよう。身の丈に合わない大金に、ロベルトは自室のベッドでにやにやしながらごろごろ悩む。半分は自分用にするとして、あとはどうしようかなー。……って、ひらめいた！
「クリスマスだ！」
　ガバリとロベルトは起き上がった。
　もうすぐ、クリスマスだ。これまでの１年でお世話になった人に何かプレゼントを贈ろう。あと、よく遊ぶあの３人へのプレゼントも。
　素晴らしい思いつきにわくわくしながらロベルトは寝転んだ。明日、早速くじを引き換えて買い物に行こう。

　翌日。
　自分のカバンを両手でガッチリ持ちながら、ロベルトは雑貨店の中にいた。普段持ち慣れない大金に用心しての事だが、かえって目立ってしまっている事に彼は気が付いていない。
（まず、あの３人のプレゼントを選ぼうかな）
　そう考えながらロベルトは店内を歩き始めた。店には様々な雑貨が所狭しと並べてある。どれがいいかな……。思案しながら混み合う店内をゆっくり見ていたロベルトが、ふと目を留めた。カバンを持ちながら、つ・つと２、３歩後ろに下がる。
（これ、いいんじゃないか？）
　それは、青・白・赤の３色でセットになったマグカップだった。３人がそれぞれこのカップを持ちながら談笑する姿が、１枚の写真の様にロベルトの頭に鮮やかに浮かんだ。うん、あの３人にはこれにしよう！

　後はお世話になった、たくさんの友人達へのプレゼントを選ばないと。ロベルトは１人１人の笑顔を丁寧に思い浮かべる。
　その中に、エリセイ・ジュラヴリョフ、レナート・ジュラヴリョフ、イリヤ・ジュラヴリョフの３兄弟の顔もあった。ロベルトがバイトをしたミルクホールに住む３兄弟。仲良くしてくれる大事な彼らへのクリスマスプレゼント、何がいいだろう。
　……あ、でも彼女は大丈夫かな。ロベルトは１人の笑顔に思考を止めた。彼女とは、同じ芸術科の胡乱路秘子。いつも不思議な笑みを浮かべ、尚且つ自分と似た様な弱さを持っている気がする彼女にも、プレゼントしたいとロベルトは思っていた。ただ、彼女は神出鬼没というか、なかなか学校でも掴まえにくい。彼女に会った時、しっかり渡さないとね。
　けれど、友人の顔を思い出しただけでも結構な数だ。彼らがみんな喜んでくれそうな物って何だろう……？
　ロベルトがううむと眉間に皺を寄せ、首を捻りながら店内を歩いていると、パッと明るい場所に出た。
「……うゎあ！」
　パステルカラーの洪水に、笑顔が弾けてしまう。
　お菓子！　お菓子！　お菓子！
　店の結構なスペースを占めるそのお菓子コーナーには、アクリルケースに区切られた様々なお菓子が、所狭しと並んでいる。どうやら、自分で袋に詰めるスタイルのようだ。それを見て、ロベルトはピンときた。
（お菓子を詰めよう！　クリスマスブーツに、それぞれみんなが好きなお菓子を！）
　胡乱路と、僕の大好きなたくさんの友達、そしてイーリャとリーセとレーナにも。みんなみんなにあげるんだ。

　店員さんに相談すると、お菓子のパターンを決めてくれれば店側が詰めると言ってくれた。ただ、数が多いので後日引き取りになるという。
　ロベルトは了承して、お菓子を選び始めた。あの人にはこのお菓子を入れよう、あ、これは彼が好きそうじゃないか？楽しくお菓子を選んでいく。
（確かに、凄い数になりそうだな）
　そう思いながらもロベルトは笑顔だ。だって、それだけ大事な人がたくさんいてくれるという事だから。
　たくさんのプレゼント。配るのはどうしようか。もういっそトナカイが引くそりに乗って配っちゃおうか？！
　驚く友人達に自分がそりでプレゼントを配る姿を想像して、１人クスクス笑うロベルトだった。