クリスマス・プレゼント｜リアクション

クリスマス・プレゼント

　橘千歳、小山内海、御剣刀。
　３人でいた時に放たれた刀の余りにストレートな言葉が、彼らにクリスマスの開始を告げた。

「―――クリスマスプレゼント、何がいい？」

【橘千歳の場合】

（咄嗟に何でもいいって答えちゃったけど……）
　夜。パジャマ姿の千歳はゴロゴロと自室で悩んでいた。

　刀の言葉は正直嬉しかった。少し頬が赤くなるくらい。
　気を使ってくれたんだなぁと思う。けれどその気持ちだけでも嬉しかった。しかし同時に、千歳は少々困る事態にも陥ってしまった。
　実は千歳もクリスマスプレゼントの事で悩んでいたのだ。
（何でもいいって返した手前、私から同じ事聞けないし……）
　小さなクッションを胸に、またゴロゴロと悩んでしまう。友人の海への分もさる事ながら、特に千歳を悩ませるのはやはり刀への分だった。

　同年代の男の人へのプレゼントなんて、親類くらいにしかあげた事がない。ではその数少ない過去の事例を参考にしようかとつらつら思い返し、すぐにあきらめた。実家というスポンサーがいたお陰で、今の自分では予算オーバーな物ばかりだったのだ。だいたい貰った刀君が困ってしまうだろうし。うん、論外。
　千歳は絨毯の上に置いてあった情報誌を拾い、パラパラとめくってみる。

　何をプレゼントしようかと、ここ最近、本とかネットとかクラスの女子トークとか、色々なものに頑張ってアンテナを張ってみた。
　アクセサリーや、手袋、マフラーとか色々あったけど、いまいちピンとこない。悪くはないんだろうけど、うーん、何と言うか、自分が知りたいのは、知らない男の子が喜びそうな物ではないのだ。私が知りたいのは、刀君に喜んでもらえる物。
　千歳は雑誌を置き、きちんと座り直した。私が、あげたいと思う相手にあげるんだもの。刀君、そして小山内さんが喜ぶ物、しっかり考えないと。

　千歳は刀と部活の剣道が一緒だ。そして毎朝２人、寝子島神社で朝練もしている。その様子を思い返して千歳はひらめいた。そうだ、ハンドタオルはどうだろう。タオルなら朝練でも部活でも使うので実用的だ。
　そうすると、小山内さんには……膝掛けはどうだろう。絵を描く事が大好きな彼女。これからのシーズン、座って絵を描いたりすると足下が冷えるのではないだろうか。
　―――うん、そうね、これでいこう。千歳は大きく頷いた。

　今度の休みに買いに行こう。タオルと膝掛けは猫柄で。そして小山内さんには可愛いのを選ぼう。可愛い彼女にはやっぱり可愛い物が似合うはず。
（２人とも、喜んでくれるといいわね）
　自分の選んだタオルで汗を拭い休憩する刀。膝掛けをして暖かそうに絵を描く海。大切な２人の姿を想像して、千歳も自然と笑みが零れるのだった。