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幽かな願いを、雨に乗せ
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●幽かな願いは
少しばかり、しんみりとしてしまった空気。
それを裂く様に、千唐のへらへらとした声が響く。
「そうだ、千草さん。君に一つ、大事なお話があるんです」
その顔には、大事なという割に、あるいは大事だからこそなのか、いつもの愛想笑いが浮かんでいた。
「お、どしたの添木くん?」
振り返って、大きな瞳をぱちくりさせる。
「寝子高の生徒になる気、ありません?」
「――えっ」
思いもよらなかった言葉に、杏子は我知らず目を見張る。
周りの皆も、程度の差はあれ一様に驚きの表情を浮かべている。
「添木、そりゃどういう……」
「どういうも何も、言葉通りの意味ですよ」
へらりと笑う千唐。
とは言うものの、このままでは杏子もなにがなにやらだろう。そう判断し、千唐はここに至るまでの経緯を手短に話しだした。
「実は、皆さんと合流する前に理事長とお話してきたんですよ。君を我が校の生徒にできないか、って」
「……そういうことか」
得心がいったとばかりに、ひとりごちる月詠。それには構わず、千唐は話を続ける。
「そうしたら、そこはあの変わり者の理事長です。会えたら考えるって、なかなか前向きな答えをもらえましてね」
だから、
「もしよかったら、これからも一緒に学園生活を過ごしてみません?」
杏子が息を呑むのが、はっきりとわかった。
「おお、そりゃええの! きっと楽しいじゃろうなぁ」
呵呵大笑する龍馬。それとは対照的に、静かに杏子を見つめる者たち。
ほんの僅かの間が空いて、杏子は龍馬に笑いかけ、
「そうだね、そうしたらきっと楽しいと思う」
それから千唐の方へと向き直り、
「ありがと、添木くん」
でも、と一歩、後ろへ下がる。その姿は、まるで境界を越えるかのようで。
境界を越えた先で、彼女は笑顔のまま首を振った。
「とっても魅力的で、嬉しい言葉だけど」
――私は春雨の幽霊。雨の日にしか居られない、幽かな存在だから。
「それは、流石にできないや」
「おいおい、見えるし触れるし、声だって聞ける。なのにまだ、幽霊なんて」
喫茶店での話は、勿論聞いていた。聞いてはいたが、それでも目の前の少女が幽霊だとは思えない修は、思わず手を伸ばしてしまっていた。
だが、その手はすり抜けた。
彼女の持っていた傘が、やはりすり抜けるようにして、舗装された地面を転がる。傘を失った身体は、雨に濡れることもなくそこに立っていた。
見えるはずのない後ろの風景が、ごくうっすらと覗く。
「今日ね、私とっても楽しかった。こんな風に、皆と過ごせて」
薄らいだ頬を一筋、雨とは違う雫が伝う。
「こんな素敵な友達と一緒に過ごせて、それだけで……幸せ、だったから」
はらりはらりと温かな涙を零し、杏子は幽かな笑みを浮かべた。
「千草がそう言うんじゃ、俺たちに止める権利はねえな」
だけど、と笑うヒーロー見習い。
「もしまた雨の日に出てくることがあったら、今度は千種から誘ってみるのもいいんじゃねえかな! そしたら、雨の日がまた楽しくなると思うんだ!」
ぐっ、とサムズアップ。ダチとの別れ、笑顔で見送ってこそのヒーローだ。
続いて笑いかけるのは、天野。
「寂しくなったなら会いに来て。また、話そうよ」
何ら動じることもなく、しかしどこか優しく、月詠が言う。
「怖がることはない。この地が好きだというなら、次もこの地に戻ってこれるだろう。安心して逝くといい」
次から次へと涙が溢れ、杏の瞳をいっぱいにする。もう、頬を濡らすのが雨なのか涙なのか、区別はつかない。
そんな彼女の頭を、ラッセルがそっと撫でる。もう、彼女の体には触れられない。だからそれは、あくまで「ふり」だが。そこに込められた心は、決して「ふり」などではなかった。
「今日はサンキュ。またな!」
爽やかな、笑顔。
杏子がぐいっ、と涙をぬぐう。その身体の薄らぎは、今にも消え入りそうな程。
そうして、最後に。
「皆、ありがと。 ――じゃあ、またね!」
今できる、精一杯の笑顔を浮かべ。
春雨の少女は、雨空の中へと溶けていった。
「本当に……幽霊じゃったんじゃのう」
ついさっきまで彼女が立っていた場所を見つめ、竜馬が感慨深げにつぶやき、
(きっと、杏子ちゃんも楽しかったよね)
海は胸中で、そっと今日一日のことを思い出す。
「あの分なら、未練は大丈夫そうだな」
もし彼女が、自分の意志でまたやってきたのなら、その時はまた話相手になるのも悪くない。鋭二は、そんなことを考えた。
(……それだけで、って。嘘くせえこと言ってさ)
道に転がったままの傘を見下ろしながら、千唐は心の内でひとりごちる。本人があの選択をした以上、彼にできるのはそれだけだった。
千唐が見下ろす傘のすぐ側、修は動揺を抑えようと必死だった。
「本当に、幽霊だったのか」
触れようとした手はすり抜け、目の前で溶けていった。それが、否応なしに事実を突きつける。時に事件は起こりはするが、それでも日々の多くをフツウのもとで過ごしてきた彼には。
彼女のささやかな願いは、あまりに切なく思えた。
頬を濡らす雨以外のものを悟られまいと、傘を畳んで雨を受け止める。
杏子の魂の安寧を、願いながら。
雨の降る音だけが、少しの間空間を満たした。
不意に、
「私たちは、彼女の死を共有し記憶した」
誰に言うとでもなく、月詠が口を開いた。
「それによって、彼女は精神的に死ぬことはなくなった」
「それは、どういう……」
「私たちが、覚えているからだ」
そうだね、と同意したのは翡翠。
「あたしたちが覚えてる限り、あの子はあたしたちの思い出の中で生き続けるんだ」
気づけば、雨はいつの間にか上がっていた。雲の切れ間から、太陽が覗き込んでいる。
翡翠は道具を取り出すと、勢いよくシャボン玉を飛ばした。
あの子にも、よく見える様に。高く高く、空へ向かって。
「雨上がりのシャボン玉も、良いもんだよね……」
舞い上がり、日差しを受けて輝くシャボン玉の群れ。それを眩しそうに眺めながら、呟いた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
風雅宿
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
学校生活
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2013年04月18日
参加申し込みの期限
2013年04月25日 11時00分
アクション投稿の期限
2013年04月25日 11時00分
参加キャラクター一覧
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