冬眠前にひと遊び｜リアクション

冬眠前にひと遊び

●おしくらまんじゅう、おやすみなさい

『ねえ、こんなところにおねえさんがねてるよ？』
　リスの声で丸美は目を覚ました。
「……あ、寝てた？　ごめん。あれ、なんだか増えてるね……え、かくれんぼもう終わっちゃった？　ごめんごめん」
　丸美は起き上がり体についた落ち葉を払い落とす。
「それじゃ、押しくらまんじゅうしよっか」
『うん、おにいさんもやろうよ』
「あ、ちっちゃい子がつぶれないように、おっきい子が真ん中で、ちっちゃい子は外側ね……」
　丸美が注意するまでもなく、リスやヤマネたちは修に登りだすのだった。
『おしくらまんじゅう、おされてなくな』
「ちょ、ちょっとクマはてかげんしてくれや、倒れそうや」
　清一郎が足を踏ん張り悲鳴を上げる。
「ふはぁ、もふもふくすぐったい……ふう、あっという間に息が切れちゃったぁ」
　熊に押されていない丸美や他の動物は楽しそうだ。

「ね、一休みしよう。みんな、せっかく冬に備えていっぱい食べてるのに、動いておなか空いちゃったら大変だからね。干し柿いっぱい持ってきたよ。食べたいひと！」
　丸美の干し柿はデザートとして好評だった。
　おしゃべり好きな碧南は動物たちに話しかける。
「ふだんはどんな風に山の中で遊んだりしているの？　こういう時でないとなかなか動物とお話しできる機会なんてないし、聞かせてよ」
『うん、とうみんしてないときはおてんきのいいひはこんなふうにおにごっこしたり、かくれんぼしたりするよ』
『おなかがすいたらえさをたべにいくの。そしておひるねしたり』
「お昼寝いいよね。はぁ、そよ風とお日様が気持ちいいねぇ。ねぇ、またいつか、遊びに来てもいいかなぁ……」
　そう言いながら、丸美はすう……とまた眠りに落ちていた。
「ふうん、やっぱり違うところもあるけど、人間とそんなに違わない部分とかあったりするんだね」
（こうやって時が過ぎるの忘れるくらいしゃべりまくったら、なんだかもうこっちが眠くなってきて……）
　そして碧南も睡魔に引き込まれていて。
　その眠気は、少しずつ動物たちに伝染していった。　

「みなさん、少し疲れて眠くなりましたか……？」
　時子が優しく声をかけると、動物たちが眠そうに頷いた。
『そうだね、なんだかねむくなってきたかも』
『あー、おもしろかったしおいしかったー』
「おつかれさまでした。ゆっくり休んでください」
　天吏も礼儀正しく言って微笑む。
　そして皆はそれぞれの巣に帰っていった。
「眠くなったら安心ですね。春にまた会いましょう。またここに来ますね……」
　時子はそう言って見送った。
「おやすみなさい、良い夢が見られますように」
　恭しく天吏は動物たちに一礼した。
「春になったらまたね」
　碧南も眠い目をこすって手を振る。
「忘れちゃだめですよー、畑に入らないでくださいね、タヌキさん！」
　梢が声を張り上げた。

　
　翌日。
　時子がこっそり見に来たときには、山は何事もなかったように静まり返っていた。
『みんなとうみんできたようだね』
　鳥さんがそう話していた。
「また春に会いましょう……」
　時子は笑顔でそうつぶやくと、帰って行った。

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あとがき

担当マスター：天村花海
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ご参加ありがとうございました。
メルヘン度高めでお送りしておりますので、リアルでないところはごめんなさい。

書いていたらなんだか眠くなりました。
暖かくなるまで冬眠したいものです。
寝ようとすると目が冴えるけど、起きてなくちゃいけないときに眠くなるのは人間もお約束ですよね。

それでは、またのご参加をお待ちしております。

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