ブラームスはお好き？｜リアクション

ブラームスはお好き？

「お茶会に来る人のために、アップルパイを持ってきたよ」
　お茶やお菓子の準備を進めている八葉ひまりは、実家のパイ専門店『Huit Feuilles』の箱を取り出した。
「ありがとう、八葉。助かるよ」
　篠崎響也が礼を言った。お茶などの用意は響也が中心にやっている。クラシック同好会の代表代理として、彼が設営の指示を取りまとめているのだ。
「大丈夫だよ。お世話になってるから、これくらいはしないと」
　ひまりは答えながら、てきぱきと手を動かした。こういう雰囲気は慣れないが、せっかく同好会に所属しているので、音楽への造詣を深めたくて参加したのだった。

「チャオチャオ！えへへー、今日はこっちで練習しようと思って」
　元気な声とともにホールに姿を見せたのは、御薗井Ｅセレッソだ。彼女はチェロを嗜む―――といっても、ブランクがあるので技術的には趣味の延長程度だ。楽器も、クラシック同好会所有―――花咲夫妻が寄付した―――のものを借りている状態だ。
「ここで練習すると、時々お客様が来て聞いてくれるのヨネ……あれ？このお菓子はどうしたノ？」
「今日は、クラシックお茶会の日だよ」
　ひまりに言われて、セレッソは目を輝かせる。
「あら、今日はお茶会ナノ？ワタシも参加したいワ！」
「どうぞどうぞ、同好会は『来る者拒まず』ですからね。人は多いほどいいわ」
　花咲千鶴子が歓迎の言葉を述べた。
「ほら、この人も賑やかな方が好きだもの」
　千鶴子の横に座っている重嗣が、黙って頷いた。

（クラシックお茶会、ですか）
　音楽会館に立ち寄った津島直治は、入口にある看板を見つけた。看板には、『どなたでもご自由に』とある。愛用のマレットは持参してきているが、クラシック同好会以外の人も来るのなら、今日は他の人の演奏を聴くことをメインにしようか。
（皆さんがどんな演奏をされるのか、興味があります）

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