オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ｜リアクション

オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ

【９】

「八神くんと御剣くんは？」
　碧南が尋ねると、円は首を振った。
「もうしばらく川の流れを見ていたいって」
「そ、そうなの？　何があったんだろ……？」
　その横では、美和ちゃん先生がブスっとほっぺを膨らませていた。
「さっきから、竜太郎くん、なんなの！」
「え？　何が？」
　竜太郎はきょとんとして、先生を見た。
「さっきからその人の服掴んでる！」
　竜太郎は円の服の袖をぎゅっと握って離さなかった。
「だって、このおねーちゃん、ヒーローなんだぜ！　格好いいじゃん！」
「やだ～！　離して～！」
　円に竜太郎を取られた気分なのだろう。先生はむぅ～と円を睨んだ。
「おねーちゃん、なんなの！　竜太郎くんを返して！」
「返せと言われても……あはは、モテる女は辛いね」
「おい、煽るんじゃない」
　朱真は眉を寄せた。
「ケンカなんてするな。ほら、左右を確認して横断歩道を渡るぞ……って、あれはなんだ？」
　一同は一斉に振り返った。
　凄まじいスピードでこちらに向かってくる暴走族が見える。
「あ、危ない！」
　碧南は悲鳴を上げた。
「こっちに近づけさせないよ……！」
　円は颯爽と道路に飛び出した。
「交通ルールを無視した者の末路を見せてあげる……！」
　道路脇に収集日を無視して取り残された燃えないごみを見つけると、それを道路にブチ撒けた。
「スイカになっちゃえ！」
　※良い子は真似しちゃ駄目だよ？
　少年達はごみにタイヤを取られ、次々と転倒していく。
「のわ！　何しやがる、てめぇ！」
「ボクはくるみ割り人形の使者！　性欲で間違った方向に進む輩を裁く！　ワリタリーヌさんだよ！」
「何がくるみ割り人形……どわあああ！？」
「はい、スイカいっちょう！」
　このまま一網打尽か……と思いきや、そこは気合いの入った少年達。
　倒れた仲間を乗り越え、突っ込んでくるバイクもあった。
　おそらく少年達のリーダーなのだろう。
　ブレーキイコールメンツが潰れるの不良の矜持があるらしく、むしろ加速してきた。
　これには思わず、円も飛び退いて道を譲る他なかった。
「あ、危な～～！　……って、先生！！」
　バイクの先には慌てて逃げようとしている先生達が。
　跳ね飛ばされるまで、もう幾ばくの猶予もない。
　しかし、そのときだった。
「暴走行為は皆の迷惑……」
　突然、降り注いだ炎がバイクを飲み込んだ。
　次の瞬間、バイクは爆発。
「ぎゃああああーーーーっ！！！」
　乗っていた少年は吹き飛ばされて、近くの大きな木の上に服が引っかかって、ぶら下がった。
　何が起こったのかもわからず、唖然とする一同。
　その様子を、仮面を付けた灯斗南が屋根の上から見ていた。
「間一髪、かな……」
　全員の無事を確認すると、斗南は踵を返して姿を消した。