オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ｜リアクション

オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ

【１０】

　路地裏に降り立った斗南は仮面を取った。
　それにしても、と思う。
（まさか、また過去に来ることになるなんて……）
　そう、街を歩いていたときに飛んで来たブラがきっかけだったのだと今更ながらに思った。
　しかし、来てしまったものはどうしようもない。
　まぁ前と同じように、しばらくすれば元の世界に戻れそうだし。
（それに、みっちゃん先生のピンチなら、めんどくさいけど、やるしかないよな）
　ふと、斗南は誰かの気配を感じて、振り返る。
　誰もいない……いや、電柱の陰から、なんだか高そうな服がはみ出てる。
「誰だよ……？」
「あ、えっと……」

　小動物のように電柱から、緋紅朱赫乃が顔出した。
　同じクラスの彼女の姿に、斗南はため息をつく。
「君もこっちに来たのか……」
「そう、みたい。今度、は、ちっちゃな、美和ちゃん、先生、なんだ……」
「ああ、どうもあの子達を助けないといけないみたいだな……ん？」
「あー！　見つけた！」
　振り返ると、竜太郎と美和ちゃん先生が目を輝かせて、こっちに走ってくるのが見えた。
「その仮面、さっきのヒーローだろ！」
「あ……しまった……」
　斗南は手に持ったままの仮面に視線を落とし、顔をしかめた。
（この子、俺の姿を見ていたのか。火、出しちゃったけど……どうするか）
「なぁなぁ、ヒーローなんだよな！」
「あ、ああ、その……」
　どう誤摩化そうか考えてると、ふとポッケに何かが入っているのに気づいた。
「そ、そう……僕は街の平和を守るヒーローなんだ。だけど、僕の正体は秘密だぞ。黙っててくれれば、君達を秘密少年隊の隊員に入れてあげるよ」
　苦し紛れに誤摩化して、ポッケに入っていたバッジを渡した。
　前に露店で買ったものが入ってて、良かったと胸を撫で下ろす。
「すっげー！　秘密少年隊だって！」
「やったね、竜太郎くん！」
　効果はバツグンで、子供達は目をキラキラさせて喜んだ。
「良かった、ね……。わ、私もこれ、あげる……」
　ここに来る際、たまたま持っていた薔薇のブーケから、一輪、刺を抜いたものを取り出すと、美和ちゃん先生の髪に挿してあげた。
「わぁ、きれい！　ありがとう、おねーちゃん」
「ど、どういたしまして……」
「ところで、ふたりだけか。一緒にいた奴らはどうしたんだ……？」
「え？　あ、そういえばいない！」
　斗南が尋ねると、竜太郎は元気良く答えた。子供は目を離すとすぐいなくなるものである。
「……まいったな。この子達、動物園に行くんだよな……」
「わ、すっげーヒーローはなんでも知ってるんだな！」
「あ、ああ、まぁヒーローだし」
「よかったら、そこのお兄さんと、私、と、一緒に、いかない、かな？」
「緋紅朱？」
「私、ここに、来るの、初めて、だから……ね」
「おねーちゃんも動物園行きたいの？」
　美和ちゃん先生が尋ねた。
「うん、そうなの……」
「そっか。じゃあ、案内してあげる！　竜太郎くんが知ってるんだよー！」
「美和ちゃんと、竜太郎君、は、なかよし、さん、だね……普段、から、いっしょ、なの？」
「うん、すっごく仲良しだよ！」
「そっか、私も、二人、みたいな、いい人、みつけない、と、ね」
　それから、赫乃は斗南を見た。
「……あの、一緒に、いいよね？」
「……ま、この辺物騒らしいからな。動物園に向かってれば、さっきの奴らも追いついてくるだろうし」