オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ｜リアクション

オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ

【１３】

「いやー、スマンスマン！　ごめんな、横嶋！」
　ユウがそう言うと、一同もワハハと笑った。
「笑いごとじゃないですよ！　危うく少年の命が儚く消えるところだったんですよ！」
　涙目で下心は訴えた。
　リアルに死ぬところだったが、赫乃のろっこんでなんとか生還することができた。
「だから、ごめんって。ほら、寒いだろ。俺のおごりの肉まん食べて温まれよ」
「こっちはこの肉まんよりアツアツでしたけど！」
　ようやく動物園の入り口まで辿り着いた一行。
　いろいろあったが、この冒険ももうすぐ終わり……。
　ちなみに、誘拐犯は消し炭になりかかったところを無事、警察に保護された。
「……皆、揃っているようだな」
「あ、八神くん」
　こちらに来る修の姿を見つけ、綾花は声を上げた。
　彼もまたどうにか極寒の川で冷えた身体を回復させることができたらしい。
「……あれ？　刀くんは？」
　円が尋ねると、修は首を振った。
「さぁ、なんでもブラの持ち主を捜しに行くとかなんとか……」
「？？？　よくわからないけど、刀くんにも何か使命があるんだね」
「ねーねー、動物園はいろーよー」
　美和ちゃん先生がむぅとほっぺを膨らました。
「そうだぜ！　せっかく来たのにー！」
　竜太郎も待ちきれない様子だ。
「まぁ待てって、おまえらのパパとママが来てからだろ？」
　ユウがそう言ったそのとき、ぐにゃりと空間が歪んだ。
「美和！」
「竜太郎！」
　歪んだ景色の向こうから、二組の夫婦が現れた。
「あー、パパ！　ママ！」
　美和ちゃん先生と竜太郎は、自分達のパパとママの元に駆け出した。
「ははっ、ふたりとも、すっげー笑顔だな」
　ユウは微笑む。他の皆も、ふたりの様子に思わず表情をほころばせる。
　そして同時に、自分達の役目が終ったことも悟った。
　再び空間がぐにゃりと歪む。
　どこかに引き戻されるような感覚。自分達の慣れ親しんだ、あの未来へ。
「じゃあな、美和ちゃん先生。また２５年後に会おうぜ」

　・
　・
　・

　２５年後の寝子島。
　昼休みの１年４組では、美和ちゃん先生がこんな話をしていた。
「見て見て、これ！　すっごい懐かしいものが押し入れから出てきたの！」
　そう言って、クラスの生徒に見せたのはバッジだった。
　なんでも子供の頃、仲良しの男の子と動物園に行ったとき、出会ったヒーローからもらったものだと言う。
「えー！　何それ～！　ヒーローなんているわけないじゃん！」
　冗談だと思って、笑う生徒達。
「嘘じゃないわよ。なんかね、火とか出してかっこ良かったんだから」
「あはは、夢でも見てたんじゃないの～？」
「おい、斗南もそう思うだろ～！」
「ん……？」
　机に突っ伏して、寝ていた斗南は寝ぼけ眼をさすりながら顔を上げた。
「よくわからないけど、悪い。ちょっと寝かせてくれ……」
　２５年前での騒動から明けて翌日。まだまだ疲れの取れない斗南だった。
「……それで、その男の子とはどうなったんですか？」
　皆に混ざって、話を聞いていた綾花はふと訊いてみた。
　随分、竜太郎とは仲良さそうだったし、いい感じに発展したのではないかと思ったのだ。
　しかし、美和ちゃん先生は首を振る。
「それがさー。すっごい仲良しだったんだけど、急に変わっちゃって」
「え？」
「俺はワタリーヌさんのお婿さんになる！　とか言い出して、ムカつくから遊ばなくなったのよ」
「えっ、ええっ、そうなんですか？」
「それから、すぐに本土のほうに引っ越しちゃって。どうしてるんだろ、竜太郎くん……」
　とそのとき、ガラガラと教室の扉が開いた。
　どうにも疲れた様子で入って来たのは、ユウだった。
「ふわぁ～、おはよーっす！」
「おはよーっす……じゃないでしょ。野菜原くん、何時だと思ってるの。もうお昼よ、お昼！」
「いやいや、昨日はいっぱい頑張ったんだから、大目にみてよ、美和ちゃん先生」

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あとがき

担当マスター：梅村象山
ファンレターはマスターページから！

マスターの梅村です。
シナリオにご参加いただいた皆様、ありがとうございました！

なんだか結果的に、暴走族はいるわ、誘拐犯はいるわで、
２５年前の寝子島はマッドシティのようになってしまいましたが、
皆様に楽しんでいただけたなら、寝子島も浮かばれると思います。

あと何回、美和ちゃん先生の人生が危機にさらされるのかわかりませんが、
その辺もお楽しみにしつつ……。

それでは、また別のシナリオでお会いしましょう！
梅村でした。

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