オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ｜リアクション

オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ

【６】

「ゴーリーラ」
「ら、らー……ラッパ！」
「パンツ！」
　碧南達は楽しくしりとりをしながら、動物園の道を歩いていた。
　最初はやんちゃな子だと思っていたふたりもこうしていると、かわいいな、と碧南は微笑ましく思った。
（ふふ、保母さんってこんな感じなのかな……）
　こうして自分と朱真が付いていれば危険もそうそうないだろう。
　しかし、子供とは海のようなもの。
　一見、穏やかに見えても、次の瞬間、大シケに見舞われることもあるのだ。そういうものなのだ。
　そう、例えば今、橋に差し掛かったこんな瞬間こそ、危険なのである。
「あー、橋だー！」
「！　ちょ、ちょっと竜太郎くん！」
　突然、橋の欄干によじ上った竜太郎に、碧南も朱真もぎょっとした。
「わー！　すごい！　竜太郎くん！」
「い、いやいや！　格好いいとか言ってる場合じゃないよ、美和ちゃん先……あ、美和ちゃん！」
　碧南は竜太郎の真似をしようとした美和ちゃん先生を引き止める。
「こら！　すぐにそこから降りるのだ！」
　朱真が下ろそうとするも、ぴょんぴょんと竜太郎は欄干の上で飛び跳ねた。
「へっへー！　すごいだろー！」
「すごくなどない！　やめろと……のわっ！？」
「あ……！」
　足を滑らせ、竜太郎はひゅーと橋の下に真っ逆さまに落っこちた。
「きゃーーーーー！！！！」
　幸い、小さな橋なので、川までの高さはさほどなかった。
　しかし、じゃっぽんと飛沫を上げて、竜太郎は川に飲み込まれてしまった。
「た、たすけてー……！」
「竜太郎！」
「竜太郎くん！」
　碧南と朱真は真っ青になった。
「！　今の悲鳴はなんだ……！」
　そこに、修と刀が走って来た。
「あ、えっと……寝子高の？」
　校内で見たことのある顔ぶれに、一瞬、碧南は目をしばたかせた。
「ううん、そんな場合じゃない！　竜太郎くんが川に落ちて……！」
「な、何……！？」
　刀は欄干に身を乗り出した。
「ゲッ！　本当に流されてるぞ、八神！」
「……助けなければ！　とう！」
　修はジャケットを脱ぎ捨て、迷うことなく川に飛び込んだ。
「あ、待て！　俺も行く……！」
　刀も続いて飛び込む。川の水は刺すように冷たく、思わずふたりも悲鳴を上げた。
「寒い、これは死ぬ、マジで死ぬ！」
　身体のできてる高校生でさえこの調子なのだ。
　小さい竜太郎がこの水温に耐えられるか、と言うと……早く助けなければ！
　ガチン！　と刀は頭の中で撃鉄を落とし、＜加速＞を発動させる。
「うおおおおおーーーーーっ！！！！！」
　凄まじい飛沫を上げて、流されて行く竜太郎にぐんぐん迫る。
　ところが、そのとき……。
「！　……なんだ、この音楽！？」
　どこからともなく、メロディが鳴り響く。
　如何にもヒーローのテーマと言った感じのこのメロディは……オメンライダーのテーマ！！
　川下の橋の上にそびえる人影。
　オメンライダーカチドキの面を被った彼女……桜庭円が碧の髪をなびかせ立っていた。
「これも大きなカップのブラの因果か、ブラに導かれ、ワリタリーヌさん過去に参上！」