オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ｜リアクション

オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ

【４】

「あいつら、どこに行ったんだ……？」
　修は眉間にしわを寄せて、辺りを見回した。
　先回りをしていると言ったユウ達の姿が見えないのだ。
　辺りは激しく車の往来する交差点。
　お子様が通るには危険な場所だと言うのに……と思っていたら、先生達は横断歩道の前に辿り着いた。
「……っ！？」
　一瞬、ドキッとした修であったが、子供達はちゃんと信号を見て、立ち止まった。
「交通ルールはしっかり覚えてるんだな……良かった」
　と胸を撫で下ろしたのも束の間、である。
　ビビーーッ！とけたたましいクラクションが鳴り響いた。
　見れば、一台の大型トラックが蛇行しながらこっちに向かって来ているではないか。
「な、なんだ……！？」
　目を細めて、運転席を見れば、なんと運転手がよだれを垂らして居眠りこいている。
「ぼ、暴走トラックだと……！　くっ……！」
　修は慌てて飛び出した。
「すっげー！　でっかいトラックだー！」
「すごーい！　びゅんびゅん飛ばしてるねー！」
　無邪気にははしゃぐ美和ちゃん先生の横を走り抜け、精神集中、息を止めた。
　次の瞬間、トラックの後輪が弾け飛んだ。
　ガリガリとアスファルトを削って、トラックは交差点のど真ん中で横転した。
　彼のろっこん＜分解＞の力だ。
「どうにか間に合ったな……。……ん、ああっ！？」
　一息つきかけた修の顔が強ばる。
　トラックを止めることには成功したが、トラックの暴走によって、ハンドルを切り損ねた車が、次から次に歩道に突っ込んでいる。
「——危ない！」
　一台の車が美和ちゃん先生のほうスリップしながら、向かって行くのが修の目に映った。
　再び、精神集中……間に合わない！！
「……＜加速＞！」
　修の目の前を、一陣の風が吹き抜けた。
　いや、風ではない。あれは風か、幻か、いや、刀だ。
　ろっこん＜加速＞で、文字通り超人的なスピードを身に纏った刀が、地面から煙を上げるほどの速さで飛び出した。
　時間にして、１秒にも満たない刹那の間隙を縫って、美和ちゃん先生と竜太郎を抱きかかえて、救い出す。
　やがて、凍り付いたた世界が、ゆっくりと溶けるように動き出していく。
「……間に合った」
　ふぅと一息つく刀。
　小脇に抱えられた子供達は、自分達に何が起こったのかもわからず、きゃっきゃっとはしゃいでいる。
「竜太郎くん、ワープしたよー！」
「なんかすげー！　けど、なんだこいつ、離せよー！」
「ぐはっ！」
　竜太郎キックがいいところに入り、刀はうずくまる。
「た、助けたのにこの仕打ち……」
　人生とはままならないものである。
　しかしまぁ、危うく大惨事になるとこだったが、見たところ怪我人もなく終わったようだ。
　トラックの運転手も無事だったらしく、トラックから這い出して、青い顔をしている。
「……子供達は無事か！」
　慌てて駆け寄ってくる修に、刀は手を挙げる。
「ああ、怪我ひとつない。元気過ぎるぐらいだ」
「そうか。良かった。……で、子供達はどこだ？」
「？　どこって、ここに…………消えてる！！」
　子供の行動力恐るべし。少し目を離すとこれである。