オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ｜リアクション

オーブラジャー！　久保田美和、人生２回目のピンチ

【３】

「あー、これ知ってるよ過去に戻ったんだよね？　まいったな～、また過去か～、美和ちゃんピンチか～」
　御剣刀はぺしーんとブラジャーと叩きつけた。
「……いい加減にしろ！　ブラジャーの持ち主見つけて文句言ってやる！」
　ここで前回の反省をしておこう。
　前回、まずかったのは聞き込みでブティックに行ってしまったこと。これはまずかった。
　下着売り場とは、男子が足を踏み入れるだけで危険な場所なのだ。
　やはり、自らの足で稼ぐの一番……というわけで、地道な聞き込みに向かうことにした。
「そこの君、このブラジャー落とさなかった？」
「きゃあ！　変態！　近寄らないで！」
「そこのボディコンワンレンおねーさん、これ、あなたのブラですね？」
「ゲロゲロ～！　なにコイツ～！」
「奥さん、このブラジャー……」
「お巡りさん！　性犯罪者です！！」
　しかし、何ひとつとしてうまくいかなかった。
「何故だ！？」
　焦燥感に苛まれ、刀はグッとブラを握りしめた。
　このままでは、このブラの持ち主が見つからない。
　別に見つからなくてもいいだろ、というツッコミはこの際なしの方向でひとつ。
「いったい、俺はどうすれば……、……ん？」
　不意に目に入ったのは、商店街の一角にある古本屋。
　その前に、横嶋下心が佇んでいるのを見つけた。
　確か、あれは３組の……と近づいてみると、彼は店頭にならんだエロ本を物色しているようだった。
「こ、これが２５年前のエロ本……！　くっ！　ビニールで覆われて中が見えませんけど！」
　所謂、ビニ本というやつである。
　有害図書排斥の機運が高まる直前のおおらかな時代であった。
「しかし、せっかくここまで来たのだから、とりあえず購入を……」
「……何してんだ？」
「？　ああ、誰かと思えば、１組の……。ハハッ、妙なとこで会いますねぇ」
「おまえもタイムスリップして来たのか？」
「ええ、まぁタイムスリップと言えばそうなのでしょうね」
　あれはほんの30分ほど前のこと。
　学校帰り、ぶらりと街を歩いていたら何処からともなくブラジャーが。
　風で飛ばされた洗濯物だろうと、親切心とお礼に付けるところを見せてくれるかもという淡い期待を胸に拾ったところ、こちらの寝子島に飛ばされてしまったのだ。
「しかし、妙なんですよ。ここに来たとき、何か映像が頭に浮かんだ気がして……」
「映像？　……あっ！」
　そう言えば、ここに来たとき、頭の中に何かよぎった気がする。
　動物園に向かうふたりの子供。
　ひとりはなんだか美和ちゃん先生に似ていたような……いや、むしろズバリ本人だったような。
「ハッ！　そうです！　美和ちゃん先生がピンチなんです！」
「確かにそんな映像だった気が……」
「むぅ、こうしちゃいられません！」
　下心はビニ本をマッハで購入して、古本屋から飛び出した。
「美和ちゃん先生云々は抜きにしても、３歳の子供だけでの冒険は危ないですからね！」
　下心はそう叫ぶと、美和ちゃん先生を探しすため、街に消えていった。
「あてはあるのかよ、あいつ……ん？　あそこにいるのは……？」
　ふと、刀の目に仲良く歩くふたりの子供の姿が目に入った。
「……って、ここにいた！」
　よく見れば、子供の後から、修がこっそり尾行している。
「もしかして、あいつも美和ちゃんを守るために……？」

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