ザ・追試　～問題用紙が逃げ出した！？～｜リアクション

ザ・追試　～問題用紙が逃げ出した！？～

１年９組：後木真央

　高野有紀は真央を職員室に呼び出していた。妙にぎくしゃくする真央を見、有紀は苦笑する。
「そんなに固くなるな、後木。自信がないのか？」
「ちがうのだ！　でも、留年は怖いのだ……」
　しゅん、として言う真央の頭をらんぼうにくしゃくしゃと撫でる有紀は、彼女の耳元で「がんばったな」と言った。答案用紙を見ると、英語と数学がぎりぎり黒点、家庭科にいたっては１００点を取っていた。
「次は、追試じゃなくて、本番でとるのだ。真央ちゃん、がんばるのだ」
「ああ、その意気だよ」
　真央はようやくいつもの猫っぽい笑顔になり、有紀も一安心、と言わんばかりにがさつな笑みを零した。

１年１０組：羽生碧南
　担任の浅井幸太は、テストの結果の前に一言碧南に言った。
「今度は、しくじるなよ？」
　その一言で、最初は「りゅ、留年？！」とショックを受けるものの、幸太の表情はちょっと悪戯な笑み。そして、帰ってきた追試結果は、無事合格の点数を取っていた。これにほっ、とする碧南に、幸太は笑いかける。
「油断大敵って言葉があるだろう？　主要五科目も大事だが、芸術系の科目も抑えていこう。な？」
「はいっ、がんばりますっ！」
　碧南は思わずうれし泣きしながら頷く。ここで頭を撫でてやりたくなった幸太だが、２人の身長差は１６ｃｍもある。妙にじれったい思いをする幸太であった。

２年３組：嘉月兔ネヴィア
「嘉月兔さん、まず、留年についてお話します」
　ネヴィアを職員室に呼んだ大橋尚は、静かに言った。
「もう一度、２年生のカリキュラムを最初からやり直す、という事です。それは、理解できましたか？」
「は、はい」
　ネヴィアは静かに頷いた。おバカなトコがあるドＭな彼だが、追試後尚から説明を受けたのだ。
「……本当に、ぎりっぎりでしたが」
　ごくり、と息を飲むネヴィア。尚は泣きそうな顔で言った。
「どうにか進級、です。こちらが、答案用紙なので確認してください」
　ネヴィアは答案用紙を受け取り、その点数が本当にぎりっぎりである事にふぅ、と溜息をついた。
　追試後、結局先生から怒られる事はなかった。そして、ぎりぎり進級決定である。とりあえず。
「ふっ、俺様にかかれば追試など」
　そんなネヴィアは今日もドＳ俺様キャラを演じる。本当は苦手な事が多いのにそう演じる事で罵り詰ってくれる人がいる限り。尚は少しだけ「大丈夫かしら」と心配になるのだった。

２年５組：北里雅樹
　生物準備室に呼ばれた雅樹は、にっ、と笑う牛瀬巧によって出迎えられた。
「北里君、進級おめっとさん」
「軽っ？！」
　開口一番に結果を言われ、雅樹は拍子抜けする。だが、巧は解答用紙を渡しながら
「体力つけた方がええかもな。がんばれ」
　と苦笑交じりにそう言った。背景を知っているかのような口ぶりに、雅樹は怪訝そうな顔になる。が、巧は普段どおりの楽しげな笑顔のままである。
「話、瓜山先生から聞いたで。追試直後に倒れたそうやないか。無茶したんとちゃうか？」
「……そんなトコです」
　まさか「問題用紙がエリマキトカゲになって逃げたので追いかけました」など言えるはずもない。雅樹はそういう事にしておいた。
「まぁ、なんにせよ４月から３年生やな。気張りぃ」
「はい」
　巧がそういいながらあめを渡す。雅樹はそれを受け取りつつも苦笑してしまうのだった。

　＊　＊　＊

　追試も無事終わる。
　悲喜交々あったようだが、今年の春も穏やかに過ぎそうな予感であった。

　――ザ・追試　（終）――

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あとがき

担当マスター：菊華伴
ファンレターはマスターページから！

こんにちは。もしくはこんばんわ。
菊華です。

まずは、リアクションを読んだ上で後書きをお読みください。

今回は追試の様子をお届けしましたが……あれ？
普通の追試光景パートのはずなのになー……？　と執筆中何度も首を傾げてしまう自分がいました。
ともかく、熱意は伝わりました。

そして神魂トラブルパート。
個性豊かな姿になった問題用紙との戯れじゃなくて、鬼ごっこ、お疲れ様でした。
リアクションのとおりの結果となっております。
個人的にほっ、としたよ！！　ほんとだよ！！

追試組のみなさんには、こちらの称号をプレゼントします。

通常パート参加者：追試を乗り越えて
神魂トラブルパート参加者：問題用紙は掴み取るモノ

何はともあれ、新年度が楽しみですよね？
これからも頑張ってください、寝子高生！

それでは、この辺りで。
また縁がありましたらよろしくお願いします。

菊華　伴

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