ザ・追試　～問題用紙が逃げ出した！？～｜リアクション

ザ・追試　～問題用紙が逃げ出した！？～

　いおねは数年前、事故で両親を失っている。その後祖父母に沢山の愛情を注がれて育っていた彼女は、どうしてもこの試験をクリアしたかった。おそらく、祖父母は留年したとしても許してくれるだろう。しかし、だからこそ、きちんとしておきたいのだ。
（高校の最初の１年で留年してたら海外留学なんて夢のまた夢です。いおねは自分の為にもきちんと進学するですよ）
　その真面目な姿勢で勉強した自信が、彼女に力を与える。「ここはこうで、これは……」とすらすらと問題が解けていく度に、いおねはうれしくなる。
（あ、あの時解けなかった問題もあるです、復習しておいて良かったですー！　あっちの問題も勉強したところです！）
　無我夢中で試験を解き、あまった時間で見直しをする。そんな彼女は知らなかったが、追試組の中で一番に問題を解き終えていたのだった。

　だが、鬼河内萌と鬼崎あやめは、そんな風には行かなかった。
　数学が気絶するほど大の苦手である萌はこっそり剣山を用意して挑んでおり、既に問題用紙にいくつもの血の痕が……！
（だめっ！　だめだめっ！　気を失ったらだめぇっ！）
　ざくっ！　と音が出るような勢いで剣山を頭に刺す萌。その形相と血塗れの額が物凄く威圧感を増す。試験監督の瓜山メイの顔色が悪くなっていることに気づかない！
「あ、あの、鬼河内さん！　ほ、保健室に……」
　メイが恐る恐る言うものの、気づかない。というより、たぶん聞こえていても無視している。それだけ真剣に問題を本気で解いているのである。問題用紙が赤く染まっていくのもお構いなしに、萌はがんがん問題を解いていく。
（保健室に連れて行くべきでしょうか……）
　メイがはらはらしながら萌を見守っていると、すぐ近くの席で、何かが吹き出るような音がした。振り返ると、あやめが吐血していた。
「フジコ先生の~~調きょ~~いやいや指導を思い出したら……」
　当初、あやめは形相こそ凄かったが、順調に問題を解いていた。英語と数学がすらすら解けたことに対し自分でも驚くほどに、である。
（何これ数学も英語もこんなに簡単だったっけ？　さすがフジコ先生！　この私でもすらすら問題が解けるなんて……！　あの特別授業の成果思い出したらなんだか胃が……）
　という具合である。もちろんその光景を見たメイの顔色がさらに悪くなる！
「鬼崎さん、保健室に行きましょう！　保健室でも受験可能ですから！」
「いいえ、瓜山先生！　私はここでうけますっ！　受けさせてください！！」
　声は小さいが、２人ともガチである。真剣である。メイは教師としての責任感から、あやめはこの追試を合格するべく、である。
「わ、わかりました。体調が悪くなったら、すぐ言ってくださいね」
　メイはそう萌とあやめに言うと、試験監督として会場を見回る。だが、メイの心配をよそに萌は剣山で頭を刺激しつつ問題を解き、あやめはあやめでフジコ先生の特別授業を思い出すたびに吐血するのであった。
　メイが保健室に行った方がよい、といい、あやめは「大丈夫ですっ！」と言い張る。萌は意識が遠のきそうになるのを剣山を刺す事でこらえ、踏ん張って問題を解く。
　赤く染まる問題用紙、青白くなる萌の頬。あやめと彼女から発せられる、謎の暗黒オーラ……。

　……なんだこの光景……。

（……あとで鬼河内さんと鬼崎さんにお話を聞いたほうがよいのかもしれませんね）
　なんか誤解（？）したメイが、使命感に燃えたのはさておき。
　この頃、彼女達の知らないところで神魂効果が発揮されていた……！

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