寝子島絶叫計画：鷲尾礼美編｜リアクション

寝子島絶叫計画：鷲尾礼美編

●血の宿命

　一行の頭上、霧の向こうから鐘の音が響いて来た。
　すると音もなく、潮が引くように霧が晴れ始め、その向こうから高い塔が姿を現した。

「時間制限か！？」

　八神修は嫌な予感が的中したと胸を曇らせた。

「あまりに客人の来訪が遅いので、見に来てみれば、これはこれは――」

　軋みながら塔の門が開き、多くのガイコツ剣士を引き連れて姿を現した燕尾服姿の男が大仰に一行の顔を見回す。

「お前が吸血鬼ヤローか？　お前を倒せばゲームクリアだ、とことんやってやるぜ」

　空里花の声に男はニヤリと笑い、その口元に鋭い牙が露わになる。

　修は急いで塔に駆け寄ると、それをろっこん『分解』で崩壊させる。
　たちまち形を保てなくなった塔は崩れ落ち、無数の瓦礫となってガイコツ剣士たちの上に降り注いで、彼らを押し潰す。
　だが巻き込むことができたのは塔の中や近くにいた敵だけだ。
　本来ならばフランケンを撃破して、塔内部への侵入を果たしてから、敵戦力分断の為に使うつもりの手だったが、今となってはやむを得ない。

「この程度で全滅とは行かないだろうが、駄目押しだ！」

　残ったガイコツ剣士とフランケンが一行を襲う。
　修の背中を守るのは加速で追いついた刀。

　橘千歳は剣を携えて、罠の探知で疲労の激しい空里花を庇いながら襲いかかる敵を切り払う。
　ろっこん『正義一直線』で生みだした衝撃波がガイコツ剣士たちを粉砕し、その身を再び動かぬ骸へと返す。

　崩れ落ちた瓦礫の中から霧が集まり、無傷のドラキュラが姿を現す。

「どうして僕たちをここへ？　なぜ僕たちを襲うんだ？」

　魔法陣の結界でがガイコツやフランケンを退けながら、天野がドラキュラに問いかける。

「どうして？　存在する事に理由が必要かね？　
　我々は存在する。これからもずっと。その為には命が必要だ。君たちも同じだろう？」

「理由がなんであれ、悪は悪。正義の名の下に必ず打ち破ってみせる。
　そして、皆で元の世界に戻るんだから」

　ガイコツ剣士を切り伏せながら千歳が言い返し、その横で修も頷く。

「こんな状況は悪夢だ。しかし――醒めない悪夢もない！」

　金属製の蜀台を槍代わりに修が叫ぶ。

「勇ましいのは良いが、この状況でどうするかね？　
　フランケンも倒せず、ガイコツ剣士もまだまだたくさん居る。
　あがいても無駄だよ。チェックメイトだ――」

　龍八や空里花も倒したガイコツから武器を取って戦うが、連戦での疲労でろっこんを使うのも限界に近い。

「畜生……体力さえあればこんな吸血鬼ヤロー、ボコボコにしてやるのに……」

　空里花が悔しさに歯軋りする。

「潔く諦めたまえ。君たちの命は私の糧となり、共に生きるのだ。無駄にはならんよ……」

　ドラキュラが手を一振りし、それに呼応してガイコツ剣士が一行を包囲し、フランケンも地響きを上げて迫って来る。

「南無……」
　
　天野が目を閉じて祈った時、突如として空が割れた。

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