『ロイヤル塩焼きそばパン』はドコへ消えた？｜リアクション

『ロイヤル塩焼きそばパン』はドコへ消えた？

　バスケットで鍛えた足腰にかかれば、一瞬の事だった。碧南が戻ってくると、修が麺たちにそっと「君達が居なければ『ロイヤル塩焼きそばパン』は完成しないんだ」と説得していた。
（これは、後ろに回ったほうがいいかしら）
　碧南はそーっと麺たちを通り抜け、そ知らぬ顔で背後に回る。
（恐らく、逃げるとしたら反対方向。ならば……！　もう、逃がさないわよ！！）
　修が引き付けている間に、碧南は麺たちを思いっきり掬った！
「さすがだな、羽生……」
　修が麺を逃がさないように追い立てる。碧南は次々に麺を金ざるで掬い、ボウルに入れていく。その素早さに修は感心した。
　彼が麺を追い立てている間に、全部金ざるとボウルに収まった麺。碧南の顔にもどことなく達成感が滲んでいる。
「おかげで麺を1本も踏むことなく捕らえられたわ。ありがとう！」
　碧南は笑顔で礼を述べ、修は辺りを見渡して取りこぼしが無いか見ると麺をひとまず学食へ持っていこう、と促すのだった。

　――その少し前。

「声を出しているんだよな……、食材。校舎は他のメンバーが回っているし、ここは体育館を覗いてみるか？」
　御剣刀の提案に、新田亮と新田樹の兄妹も賛成する。そうして向かっている最中に出くわしたのが、ジャン・ポランスキーなのであった。
　刀がそれとなく音を拾ってもらえないか、とお願いするとジャンは目をきらきら輝かせて「お任せだよ！　新調したばかりの機材で探すデスね！」とマイクで音を探ってくれた。そのお陰で、体育館にて『ぎょぎょっ』という声を拾えたのだ。
　体育館に入った４人だが、そこはがらん、としていた。しかし、ジャンのマイクはここから『ぎょぎょっ！』という声を拾っている。
「驚かせばいいんだよね。何からいこっかなー」
「それじゃ、俺はろっこんをつかって動体視力を上げてみよう。声だしは樹と御剣に任せたいけどいいか？」
「おう、いいぜ」
　樹が色々考えている側で、亮と刀は作戦タイム。ジャンは少し下がって録音している。ジャンはこれが現実か否かなど気にしていない。面白い音に夢中になっているので、ろっこん発動もなんなくいけた。恐らく映画の特殊効果演出でも思い出しているのだろう。
「じゃあ、いっくよー♪　万有引力を発見したリンゴの木の果実は、美味しくないんだって！」
　樹がトリビアを披露する。だが、魚肉ソーセージは現れない。亮は息を吸い、脳内で『発動』と言う事で使用できる『鬼人の体（サード・フォース）』を使い、更に進化能力も使って普段の６倍の動体視力で様子を伺っていたが、反応は無い。
　つづいて刀が腹の底から声を出した。剣道で行う気合の篭った発声だ。それに驚いたのか、『ぎょぎょっ！』と声がした。
「おぅ！　マジックですね！」
　ジャン先生が目を輝かせて録音体制！
　亮は６倍となった身体能力で迫るも、目測を誤ったのか、腹の辺りにショックが走る！　刀も『加速』で追いつこうとするが、それより早く魚肉ソーセージは消えてしまった。
「くっ、失敗か……」
「あきらめるのは早いよ。もっと驚かせてみよう！」
　悔しさを滲ませる亮の背中を樹が叩き、励ます。刀はそんな兄と妹のやり取りをほほえましく思いながら、虚空に言う。

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