『ロイヤル塩焼きそばパン』はドコへ消えた？｜リアクション

『ロイヤル塩焼きそばパン』はドコへ消えた？

「きゃあああっ？！」
　スカートの中に飛び込んだキャベツに驚き、そのまましゃがみこんでしまった！
「やった！　女子のスカートの中だ！　さぁ、それをめく……」
「れるわけないじゃないですかああっ！」
　執がキャベツを捕らえたと考えて言い、璃亜が顔を真っ赤にして叫んだ！　スカートを抜けて、猛スピードで転がるキャベツ。
「待って！」
　先輩２人のやり取りをあえてスルーし、空のギターケースを開けて進路方向へと向かう音葉。そして、通路いっぱいにギターケースを開いて待ち伏せする！
「退路は任せた、沼田さん！」
「筋肉痛にならなければいいけど……」
　執が笑顔で言えば、沼田さんは体に鞭打ってキャベツの退路を絶つべく後ろから迫る。
『きゃっ、キャべッツ？！』
「覚悟！」
　音葉が思いっきりギターケースを閉める！　がたん、ごとん、と音を立てるキャベツの力は強く、開かないようにするには苦労した。
「ど、どうにかつかまりましたね……」
　璃亜がそういうと、キャベツがケースの中で跳ねる。実に元気のいいキャベツである。
「うん、ひとまず解決かな？　沼田さんもありがとう」
　執が沼田さんにお礼を言っていると、沼田さんはふうふう息をきらし、汗を拭いていたが、にっこり笑って「よかった」と頷いた。
「でも、これ……逃げたりしないわよね」
　音葉が未だがたがた言うギターケースを見、眉間にしわを寄せる。結局４人は見つかった材料を台車に載せていた八神修に渡すまで交代で押さえ、見張る羽目になるのであった。

　一方、その頃。講堂のステージ前では酒浸朱蘭が「おっ！？」と楽しそうな表情を浮かべていた。
　聞き込みしようにも自分達以外の人間がおらず困っていたところ、ジャン・ポランスキー先生と遭遇。
「んー、講堂から校長先生の声がするヨ？　校長先生もなにか見ているかもしれないですネ」
　と言われたのでなんとなく「塩だれか？」と考えた朱蘭は二階からごろごろとか、悲鳴とか聞こえるのを通り過ぎここまでやってきた。
（これはもしかしてビンゴか？）
　勢いよく戸を開けると、そこにはタッパーが浮いていた。しかも、校長先生の声で「えー、シトラス・ガムダンは～」など演説をしている。
「……なんだか最後まで聞いていたら眠たくなりそうだぜ……」
　朱蘭は宙に浮きながらちゃぽん、ちゃぽん、と中の塩だれを揺らして演説を続けるタッパーを観察していたが、ここでふと沸き起こる疑問と好奇心。

　――意志を持っている水に、自分のろっこんを使ったらどうなるのだろう？

（話に夢中になっているみたいだし、そっと近づけば取れる筈だぜ）
　朱蘭はそーっと後（？）に回り込むと、徐にタッパーを掴む。
「！！　話し中ですから手を離してくださいねぇ」
「こちとら『ロイヤル塩やきそばパン』を作らないとフツウが壊れちまうんだぜ」
　朱蘭はため息混じりにいい、すっ、と指を十字に這わせる。彼女のろっこん『似非バッカスの施し』は『液体の入った容器に』こうする事で『その中身である液体を飲んだ者を酔わせる』事が出来るのだ（正し、味は変わらない）。
（さぁ、どうなるんだ？）
　内心わくわくした気持ちで様子を見ていると、暫く震えていたタッパーがやがて身動きを止めた。そうかと思えば気持ちよさそうな寝息が聞こえる。
「？？？　なんか寝ちまったんだぜ？」
　まるで酔っ払った反応みたいだなぁ……と首をかしげた朱蘭であったが、細かい事は気にせず、タッパーを手に講堂を後にしたのだった。