『ロイヤル塩焼きそばパン』はドコへ消えた？｜リアクション

『ロイヤル塩焼きそばパン』はドコへ消えた？

破：職員室での戦いと、校長室での戦い（？）

　小麦粉捜索隊一行が北校舎の２階に上がる前。屑利執は魔方陣をどこかに描き、念じてろっこん『降臨の儀』を発動させていた。そして呼び出される本土在住の温厚なサラリーマン、沼田さん。
　事情を聞いた沼田さんは困ったような顔で「わかったよ、執くん」とこくん、と頷いた。
「あの、大丈夫……ですか？」
　心配そうに問いかける塔ヶ崎璃亜。ギターケースを抱えた水川音葉もまた「お仕事中のはずだよね……」とちょっと顔を引きつらせている。
「まぁ、丁度休憩中だったから、あまり長くなければ大丈夫、だよ」
　沼田さんはそういって綺麗にアイロンがけされたハンカチを取り出して汗を拭く。
　気を取り直して４人で材料捜索。すると、職員室から『きゃべーつ』が聞こえてくるではないか。
「キャベツがここにいるみたいだね！　がんばって捕まえよう！」
　音葉がきゅっ、と手を握り締めて気合を入れれば璃亜もこくん、と少しだけ頬を赤くして頷く。
「いけっ、沼田さん！　キャベツゲットのために！！」
　執は眼鏡を光らせ、高笑いと共に沼田さんの肩を叩く。やれやれ、と言っているように「はいはい」と返事した沼田さんは職員室の戸に手をかける。だが、ここで音葉が「あっ」と小さく息を漏らし表情を険しくする。
「ちょっとまって！　さっきジャン先生がいたし頼んで人払いを……」
　ふと、先生方の事を思い出した音葉が沼田さんを止めようとしたが、既に遅し。沼田さんは勢いよく職員室の戸をあけていた。
　誰もいない職員室。その最も奥の机にキャベツの姿があった。大きな１玉のキャベツはふわりと浮かび『きゃっ、べーつ』と鳴いた。
「そ、そこに居てくださいね……」
　璃亜がそっと近寄ろうとすると、執がそれを止める。
「？　どうしたんですか？」
「こういう場合はこっちに来させてみたほうがいいかもしれない」
　執はそう言うと、にっ、と笑って……挑発的な眼差しを向ける。そしてヘイヘーイ！　とおちゃらけはじめた！
「レタスのパチモンがよぅイキがってんじゃねーぞー！！　……と、沼田さんが仰っています！」
「！！？　ちょっ、私はそんな事を」
　執の言葉に沼田さんが慌てた時、緑色の残像が見えた。気がついたとき、執によって前に出されようとした沼田さん共々、職員室の扉に叩きつけられている。
「……こ、これ本当にキャベツなんですかぁああ！？」
　思わず声を上げる璃亜だが、すぐさま「きゃんっ？！」と愛らしい悲鳴を上げて倒れこむ。キャベツが襲い掛かってきたのだ！　音葉は寸でのところで避けたものの、璃亜たちの様子を見、戦慄していた。
「むむっ、さっそくこれが役立つかな？」
　前もってギターを抜いてきた空のケースを手に、音葉が前に出る。元々キャベツが姿を現すのをじっくり待つ予定だった。まさか待ち構えているとは……！
（どこにいった？！）
　音葉がギターケースを開き、周囲を見渡すが姿を消している。執は沼田さんと一緒に床に伏せて様子をうかがい、璃亜はおそるおそる職員室の中を歩き回る。
「さぁ、来てください。受け止めて見せますっ！」
　と覚悟を決めて言い放つ璃亜。だが、悲劇はすぐ目前に迫っていた！　彼女のすぐ側ではキャベツを見つけた執が沼田さんに何か耳打ちしていた。
「沼田さん、こっそり向こうに回って」
「わかったよ」
　執に指示され、沼田さんはなるだけこっそり向かう。そして璃亜と音葉にも動くな、と合図する。
　キャベツは楽しそうに床をころころ転がっている。そして、執と沼田さんが待ち構えるところへと差し掛かった！
「いけ、沼田さん！」
「おぉっってええ？！！」
　執が中腰になって身構え、沼田さんがキャベツへと飛び掛りながらも困惑。てっきり執も反対側からキャベツへ飛び掛ると思っていたからだ。
『きゃべーつ！』
　キャベツは楽しげに飛び跳ね、真横へ逃げる！　そこにいたのは璃亜で……。