『ロイヤル塩焼きそばパン』はドコへ消えた？｜リアクション

『ロイヤル塩焼きそばパン』はドコへ消えた？

序：特別教室付近では……。

「パンと言えば小麦粉ですわ。小麦粉を探してみましょう」
　上下左右がぽん、と手を打って提案する。
「寝子高レディの為に、いや、パンを楽しみにしている世界中のレディの為に、材料をあつめてみせよう！」
　きらっ、と笑顔を輝かせ八十八旗信彦が椎井莉鳥へ手を差し伸べる。だが、それをスルーし、彼女は幼馴染（で元恋人）の北里雅樹に虫取り網を手渡す。
「とりあえず、ここから探し始めましょ？」
「そうだな。動かなきゃロイヤル焼きそばパンは食えないしな……」
　虫取り網を手にした雅樹は、とりあえず眼鏡をかけて己のろっこん『精密視力』
（マイクロ・アイズ）を発動させる。顕微鏡レベルの視力を得る事で、ヒントになるものを探そうと言うのだ。
　そのお陰か、廊下に落ちた微量な小麦粉を発見する事ができた。それは階段に続いており、２階で途切れていた。
「２階のどこかにあるのかしら？」
　莉鳥が「あら」と小さく呟く。
「それじゃあ、２手に分かれてみる？　５人もいることだし」
　本居陽毬の言葉に、４人は頷いた。

　雅樹と莉鳥は理科室と理科準備室から、信彦と左右、陽毬は家庭科室から調べてみる事にし、端から調べていく事に。ちなみに職員室から『きゃべーつ』って声が聞こえてきた上、なんかドタバタする音が聞こえた。既にキャベツを探しに来たメンバーとなんかどんぱちやっているらしい。
「……だ、大丈夫ですの？」
「きっと大丈夫、大丈夫♪　向こうに任せておけばいいのさ」
　嫌な予感がした左右が職員室から聞こえる物々しい音にちょっとだけ顔が引きつったが、信彦が先を急ごう、と促す。視線の先では既に陽毬が家庭科室に「小麦粉ちゃ～ん」と声をかけている。
　すると、少し小さな声で『こむぎこ？』という声が聞こえた。もしや、ここにいるのだろうか……？　と期待の篭った眼差しで３人は顔を見合わせる。
「とりあえず、入ってみましょう？」
　左右の言葉に、信彦と陽毬は頷いた。

　一方、理科室から出た莉鳥と雅樹は慎重に耳をそばだてていた。
「声、聞こえる？」
「いや……。聞こえたような気がしたが、上下達の声かもしれないしな……」
　２人は少し考えつつも理科準備室へと足を踏み入れる。莉鳥は用具室から持ってきた虫取り網とゴム手袋を装備し、慎重に中を覗く。同時に雅樹が己のろっこんをつかって小麦粉の残留がないか調べていた。
「小麦粉らしいものは、ないな」
「呼びかけてみましょ？」
　雅樹が首をかしげながら答えると、莉鳥が頷く。そして、そっとやわらかく優しい声で「小麦粉さん、いる？」と問いかけた。すると……、確かに、小さな声で『こむぎこ』と鳴くのが聞こえた。だが、理科準備室の中からではない。
「あっちね」
「行こう！」
　莉鳥の言葉に雅樹が駆け出そうとする。だが、莉鳥はそんな雅樹の肩を掴んで引き止めた。
「何するんだ？　早く行かないと……」
「怖がると思うわ。だから、慎重にならないと」
　彼女は小麦粉に対する柔らかな笑顔ではなく、ちょっとぶっきらぼうにそう言って歩き出す。雅樹は僅かに肩を竦め、莉鳥の後を追った。

　莉鳥と雅樹が家庭科室へ近づいている頃。家庭科室では陽毬たちが奮闘していた。といっても、呼びかけなのだが。
「小麦粉ちゃ～ん？」
「色白美人な小麦粉ちゃんはどこかな～？」
「こむぎこさん、いたら返事してくださいまし～」
　３人がそっと呼びかけると、奥の方から『こむぎこ』という声が聞こえる。その方向は丁度家庭科準備室である。

このページにイラストを設定する