空想サバイバル・バトル　～寝子島を奪還せよ～｜リアクション

空想サバイバル・バトル　～寝子島を奪還せよ～

　・ガトリング強奪開始、屋内戦（０９：５０）
　
　ドォン！
　敵の射撃とともに死体人形の手榴弾は爆発した。
「今だ、撃て！」
　修の声で、荒太郎と修、シグレの３人が一斉に中を撃ちまくるが、どうも反応が鈍い。
「……どういうことだ？」
　部屋をのぞいてみると、無人の部屋に親無線機とガトリングガンが置いてあった。
「まさか、この七砲身は……！」
「知っているのか、雨崎？」
　驚く荒太郎に修が尋ねる。
「なんで、これが置いてあるんだろう？」
　GAU-8 Avenger、戦闘用航空機に積まれるはずのそれは、今、銃身を市街に向けて設置されていた。
　ぶっちゃけると、二次世界大戦の頃よりも３０年ほど進んだ技術で、単純に敵側のボスである実理が戦車攻略用に置いたのである。
「おい、無線機はいいのか？」
　シグレが親無線機を指さす。
「はぁい、夢の世界の兵隊さん！　ようこそぉ！　あたしの世界へ！」
　その瞬間、無線機から声が響いた。
「……お前が、黒幕か」
「双葉か、遅かったな」
　遅れてきた仄に、シグレが一言返す。
「あ、……傷」
　仄の傷を治した赫乃が心配そうに仄を見るが、大丈夫だと手を振った。
「黒幕？　はぁ？　何それ！　あたしはね！　遊び相手が欲しいの！」
　心外だと言わんばかりに、実理の声が告げる。
　無線を通しているので、いっそうその甲高い声がいらだちを誘う。
「夢でも死んだら痛いだろうな、逃げずに首を洗って待ってろよ」
　この言葉の意図が、相手の思考に無意識に逃走を意識させるというのが仄の狙いだった。
「あっはっはっはっはっ！　そんな風に短絡的思考は嫌よ！　あたしはね！　ゲームがしたいの！　それもとびっきりリアルな戦争ゲーム！」
「……」
　実理の声に、修は敵の意図をある程度つかんだ。
　つまり、こいつは遊びたいだけなのだ、良い迷惑である。
「それで、どうして俺たちなんだい、お嬢さん？」
　シグレが誘うように聞く。
　赫乃に片目でウインクを飛ばしつつ、さらに情報を引き出そうとする。
「何言ってるの、望んだのは貴方たち！　あたしは招待しただけ！　といって、全員がそうじゃないけどね。破壊的願望、非日常を求める。いいじゃない！　非現実的！　どう、どう？　どう？！　これが貴方たちとあたしの望んだ世界よ！　きゃははははは！」
　しばらくすると、ぴたりと笑い声が止んだ。
　ヒューヒューという呼吸音とともに、実理は言う。
「そこのアヴェンジャーとこの無線はちょっとしたご褒美よ！　使えるようならどうぞ使って、さぁ、早くあたしのところへ来て！　そしてあたしを殺してよぉ！　そこから出れたら……ね！」
　そう言って、ブツっと無線が消える。
「あ……あぁ……」
　赫乃が言いようも無い恐怖に襲われる。
　まるで、成長してない子供のようだが、成長してない子供はある意味たちが悪い。
「……そのまま使えるようだ」
　気を取り直したように、修が言う。
　仄はなにやら考え込み、荒太郎はアヴェンジャーを分解しはじめている。
「あ、トラックが来たねぇ！」
　荒太郎がトラックに気づき、シグレもまた、建物の中から響いてくる足音に気づいた
「……まだ生き残りがいたか、俺たちが片付けている間に、頼んだ」
「私……も、いく！」
　シグレはそんな赫乃を見ながら、嬉しいやら残って欲しいやらで困惑したが。
　赫乃の表情を見ると、深く頷いた。