空想サバイバル・バトル　～寝子島を奪還せよ～｜リアクション

空想サバイバル・バトル　～寝子島を奪還せよ～

・輸送作戦（１０：１５）
　

　シグレたちと別れてから、荒太郎はガトリングの解体を終え、パーツをトラックに積み込む。
　その間、修は無線機を弄り、味方全体の通信状況を回復する。
「あはー……いいわねぇ。癖になりそう」
「……分かった、死ぬなよ」
　向こうから虚の声が聞こえるという事は、どうやら無線は使えるらしい。
「……戦力が思ったより分散している」
　しかし、遅延作戦そのものは誰も意図せず成功していたのである。
　これを是とするか否とするかは置いておいて、修は、すぐに他のチームへの通達を伝える。
　仄は、どちらも手伝いつつ、二人を助けている。
　そこに、満月が合流した。
「やっ！　青少年たち！　元気に戦争しているかい？」
　そういって、にやりと笑う。
「それは、ちょっと洒落にならないぞ」
　修は、そう応えて作業に戻る。
　先ほどから敵に偽報を試みているが、無駄なようだ。
　部品の運び出しは、街で闘っていたチームを呼び寄せ、彼らに助けられ、順調に進む。
　荒太郎と満月らは、次の場所へと進んだ……。

　その頃、シグレは思わぬピンチを迎えていた。
　残敵の掃討にでたつもりが、不意を突かれて赫乃が敵の下級士官に捕まったのだ。
　本来なら、シグレはこれを防げたはずだったが、今回は完全に不意を打たれた……なぜなら。
「はぁい、さっきの色男さん」
　下級士官が無線機を開くと、そこから実理の声が聞こえた。
　どうやら実理の遊び相手が決まったらしい。
「さ、て、と。捕まえた！　あら？　ダメよ無線を使っちゃ」
　味方に危機を知らせようとしたシグレは、手段が無いとばかりにあっさりと押さえ込まれる。
「私、の……せい、で……！　……あっ！」
「っ……手を出すな！」
　赫乃は必死に、抜け出そうとするが、そばに居た兵士が一発頬を張る。
　シグレは、全身にわき上がる怒りを感じた。
　怪盗が盗まれるとはなんたる不覚。しかし、怪盗としての冷静さを残していたシグレは同時に気づいていた。
（……変な部分の知恵だけは回る、か）
「さて、あとは煮るなり焼くなり好きにね！　脱出できたら、殺しに来てね♪」
　実理は明るくそう言って、無線を切る。
　それと同時に、シグレに向けて、下級士官がライフルを構える。
「……だ、めぇっ！」
　その瞬間、兵士にかみついた赫乃が戒めを偶然振りほどき、シグレの前に躍り出た。
　何という偶然だろうか。まるで何かの力が働いたようだ。
「……いつまで、掴んでいるっ」
　その瞬間、たまたま利き手側の敵が腰に持っていたナイフを奪い、切りつける。
　振り返りざまにもう一人。
　そして、下級士官もその勢いで惨殺する。
　この場所に敵は居ない少なくとも、シグレはそう見えた。
「シグレさん、無事？　……よか、……た」
「……あぁ」
（こんなんで気づくとか、遅過ぎだろ……）
　内心の叫びたい衝動をぐっと抑えながら、シグレは頬に伸ばされた手を握り返す。
　だが、不幸と幸運はそれだけでは終わらない。
　パンッ！　と乾いた音が響いた。
「がっ」
　その瞬間、体に突き刺すような痛みを感じた。
　振り返る視線の先には、先ほど赫乃の頬をぶった兵士が銃を構えていた。
「貴様か……俺の赫乃を打った事、豚みてぇな悲鳴をあげて償え」
　振り返りざまに、シグレは手に持っていたナイフを投擲し、兵士を倒す。
　これが、シグレの最後の行動となった……。
「……えっ」
　か細く、赫乃は驚く。
　そう、シグレの背中から胸に銃弾がなぜか貫通し、胸に真っ赤な花を咲かせていたからだ。
（パーフェクト、とは……いかない、か）
　そう言って、赫乃の隣へシグレは落ちる。
　ちょうど、寝ている赫乃の隣に寄り添う感じだ。
（映画、の恋人……同士、みた、い）
　薄れゆく意識の中そんな思考に赫乃はそう思ってしまった。
「……ど、こ？」
「……」
　ゆっくりと、無意識のうちにシグレは赫乃の手を握る。
　赫乃は、その手に力がこもっていた事だけは覚えている。
　お互いの手を握りながら、二人は事切れた。

○死亡報告（１０：２０）
　シグレ・ナイトウォーカー　銃弾貫通による、ショックにつき死亡
　緋紅朱赫乃　銃弾の傷による、失血死亡

○現在の敵の兵士残数２５０人