空想サバイバル・バトル　～寝子島を奪還せよ～｜リアクション

空想サバイバル・バトル　～寝子島を奪還せよ～

【開戦の時、来たれり】

・落神神社境内にて（０９：００）

「あっはっはっはっはっは！　来た！　きたきたきたきたきたぁきた！」
　ぎょろりと、自身も最高指揮官の軍服を身にまとった尾棹実理はぎらりとむき出しのナイフに舌なめずりをしながら、最初からなぜかあったモニターを眺める。
「人が死んで、血潮を啜り、屍を踏み超えてあたしを殺しにやってくる！　どうしようもないくらい、戦争を賛美しながらやってくる！　殺すとか殺されないとかの倫理を超えてやってくる！　いいわ……あぁ、すばらしい！」
　真っ白な肌に、外にも出ないのかくたくたでぼろぼろな全身……髪も何もあったものじゃないその姿は、一種の狂気である。
　画面の中の何人かを拡大する。なぜ出来るかは考えてない。
　画面の中には何人もの寝子島の面々が映っており、今まさに寝子ヶ浜海岸に突っ込む準備をしているところだ。
「ねぇ……貴方たち、戦争は好き？　あたしはだぁいすき！　だからね、早くあたしのところへ来て！　そう、これは全部夢……だから、あぁ、もう、やりたいように、生きたいように生きて！　醜態を見せて！　早く、はやくはやくはやくあたしを殺してよぉぉぉぉぉぉぉ！」
　そして、突然、ぴたりと動きを止めた。
　数秒間、唇をだらしなく開けて硬直する。
　目は眼球が飛び出さんばかりに大きく見開かれており、はぁはぁと口から荒い息が漏れる。
　しばらくすると、ぴたり、とそれらの行為は止んだ。彼女はすっと黒い軍帽をかぶって、元々据え付けられていた指揮所の自分の席に向かう。その表情は無表情である。
　境内の真ん中には大きな寝子島を模した模型が置かれており、ここから指揮をするらしい。
「…………」
　一斉に機械じみた動きで敬礼をする兵士の人形たちに敬礼を返したながら、尾棹実理は無表情から一気に狂気に満ちあふれた笑みを浮かべるのであった。

　・寝子ヶ浜海岸付近「甲船」（０９：００）

「よし、みんなは別れたな？」
　それぞれの指示通り向かっていったのをみて、東中居陽二は安堵した。
　ろっこん、【俺の聖域】結界も無事展開が終わり、敵の討つ銃弾も跳ね返している。
　時折、砲弾が直撃してミシリッ！　と嫌な音を立てる結界を維持しつつ、ちらりと隣を見る。
「うわ、怖ぇな……当たったら痛いじゃすまないぞ」
　ぶるり、と心から震えながら陽二はつぶやいた。
　こんなシチュエーションは夢でなければ二度目はご免である。
「こちら、邪衣だ。今から霧を発生させる」
　その隣では邪衣士が、同じく甲にて、霧を発生させようとしていた。
「頼むぜ……！」
　そういって深呼吸してから指を３回パチンと鳴らす。
　瞬く間に発生した霧が、自分たちの周辺を覆っていく……。
「……あとは、どれくらいろっこんが使えるのか……だな」
　じわりと額に玉のような汗を浮かべながら、士はつぶやくのであった。
　しかし、次の瞬間、怒鳴るような声が聞こえてきた。
「はわーっ！　ケッキョク、どうすれば良いですか！！」
　先ほど、作戦の説明を受けたシーリ・ハユハが船の操舵をしながら言う。
　船の操舵は自分がしている。しかし、作戦があるから今から空へいけと言われたからだ。
　つまり、二つの相反するお願いを受けて、ちょっと混乱しているのだ。
　浅沼柳司は困ったようにそして焦るように考える。
「せや、誰か操船出来る奴はおらんか！」
　柳司は焦ったように呼びかける。
「……まぁ、幼い頃の記憶を掘り起こしてなんとかするわ」
　エヴァ・ブランシェが素早く駆け寄って、操舵する。
　自称トレジャーハンターな両親に色々鍛えられたという記憶を応用して、船を動かす。
　一方。
「……ほな、いくで！」
「気をつけるのですよー！　ナハダーン！」
　そう言って柳司は口笛を吹いてろっこん【有翼人】を使い、飛行する事によって抱えたシーリを運搬する。
　そしてそれに便乗して雨崎荒太郎がろっこん【コノオオゾラニー】で八神修を抱えて空へと舞い上がった。
　今まさに空と海からの侵入が行われようとしていた。

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