空想サバイバル・バトル　～寝子島を奪還せよ～｜リアクション

空想サバイバル・バトル　～寝子島を奪還せよ～

・寝子ヶ浜（F１１付近　０９：１０）

　どうしてもう一台のトーチカが見当たらないのか？
　それはここで語られる。
　柳司が甲船より飛び立って１０分くらい経過した頃であったろうか。
　当初は、E11付近に飛ぼうとしていた柳司だったが、シーリによって差し止められていた。
　なんと、F11付近に最後のトーチカを見つけてしまったのである。
「ほなら、さっさと破壊するで！　味方を楽にしたる！」
「はわっ！　そうデスね！」
　シーリが細かい目標を見つつ、柳司がゆっくりと上空からトーチカを見定める。
「もうちょい右か……そろそろいけるか？」
「もうちょっと高度を落とすと、敵に見つかるかもです！」
　シーリが意味ありげに言う。
「――どういうこっちゃ？　まぁ、ええわ、ほないくで。ピン抜いてや」
　疑問に思いつつも、狙いを定めて、手榴弾を投下した。
（これが戦争か……俺が人殺すんか、偽もんやと分かってても胸糞悪いな）
　そう思いつつも、落ちていく手榴弾を見る。
（あー、こんなんさっさと終わらせようや）
　そう思ったのと同時に、轟音が響き渡った。
　爆音とともにトーチカが吹き飛ぶ。
「……せや、戻らな」
　そうして、慌てて海岸の援護へと向かったのであった。
「はっ！　では、こっちにのこるですよ」
　もちろん、シーリをトーチカの付近に下ろし、掃討作戦と終わった後の援護を頼んでお置いた。
　なお、シーリはその後、AとB地点を転々とし、敵の数を減らし続けた。

　
・寝子ヶ浜（G11付近　０９：２７）

　銃弾を避けるように、天野を拾った柳司であったが、状況は刻一刻と悪くなる。
　天野を助け、空中へ飛び立った柳司へ、一斉に銃撃が集中する。
「ぐっ……はよ！　はよ移動せい！」
　その言葉が利いたのか、真帆と満は敵の残した塹壕へと移動しつつ、他の地点への移動を妨害するように陣形を立て直していたが、数の多さに次第に消耗していた。
「はぁっ……はぁっ……無事か？」
　奇跡的に頭に命中しなかったが、柳司は全身に銃弾を受け続けながらも、大砲を壊しつつ殺陣になりそうな船の部品を運び、敵に対抗する陣形を構築する。
　その間にも、次々と銃弾が命中する。
「川の向こう、じいちゃん……あ、でも、俺のじいちゃん、死んでな……」
　それが空中から落下しつつこの世界で柳司の残した最後の言葉であった。
「……何をやっているのですか？」
　そんな中、真っ赤に返り血を浴びたエレノアたちが戻ってきた。
　ついでにエレノアは近くに居た敵兵をきっちり片付けているところを見ると、多少の余裕はあるようだ。
「一つ、二つ……三つ、四つ。あ、五つ目外したべ。弾込めと……んだけどやっぱ爺ちゃんみたいに上手くできんどなぁ」
　そうぼやきながら、海斗が、トリガーを引いて、真帆たちの近くにいた敵兵を撃ち抜いていく。
「あはー……いいわねぇ。癖になりそう」
　敵が乱れたところに、虚が突っ込んでいき、敵兵の喉をかっ斬る。
「ほどんどの兵はここに居るようね……あと、１５０人ほど殺せば楽になりますね」
　ざっと、周囲を見ながら、エレノアは楽しそうに笑った。
　こうして、彼らはさらなる死闘へと足を踏み入れていくのであった。

○死亡報告（０９：２７）
　浅沼柳司　全身に銃弾を受けてのショック死