空想サバイバル・バトル　～寝子島を奪還せよ～｜リアクション

空想サバイバル・バトル　～寝子島を奪還せよ～

・寝子ヶ浜海岸付近「乙船」（０９：００）

「……霧ね」
　エレノア・エインズワースは先ほどレクチャーを受けたボルトアクションライフルの使い方を思い浮かべつつ、ふと笑みを浮かべた。
　外部まで結界に覆われていないこの船は、いつ沈んでもおかしくない。
　しかし、悠然と笑みを浮かべるその姿は、信頼か……あるいは、高揚感か。
（フツウの守り手を自負する皆さんが異世界とは言えスポーツ感覚で人を殺す……実に私好みの皮肉です）
　しかし、これもフツウを守らんが故なのだ。
　こういった矛盾を含む問いというのは、起こりうる。
　それを知った上でなおも問いかけたい衝動というのに駆られる。
　そうやって、エレノアが思考で遊んでいる間に霧は展開していく。
「砲弾！　およそ三二〇！」
「さくっと避けるよ！」
　霧の発生前、双葉仄の目視観測と七海真帆の操船技術で、かろうじて船は支えられていた。
　しかし、それらも終わりを迎えようとしていた。
「……どうやら、霧を発生させたようだな」
　やれやれと仄は言う。しかし、気は抜けない。
「まだ撃ってくるわね……これ、面で射撃してない？　むしろこっちの視界が遮られて危険よね……？」
　相手は、霧の発生している地点周辺を弾の続く限り点を狙うより面で射撃すればいい。
　一応、自分たちは楽にはなったが、霧のある方角からはいつ、どの角度で飛んでくるかはさっぱり分からなくなってしまった。
「あの魔方陣があるとは言え、どれくらい効果があるか分からないしな」
　そう言って、仄は船全体に描かれている魔方陣を見る。
　ろっこん【裏切りテリトリー】逆巻天野のろっこんであり、この船に飛んでくる砲弾や銃弾を反転させるためのものだ。
　だがしかし、役に立っているとは言えさすがに船の外まではカヴァーできない。陣そのものは船の内部で、皆を守るように働いているので、船そのものに直撃すれば意味が無い。
　霧を避けるように、大きく右方向へ迂回しつつ浜辺を目指す。
「さぁ、突っ込むよ！　準備はいい！？」
　どちらにせよ、後退はできないのだ。真帆はぐっと操舵を握りしめると、浜へ向けて船を突っ込ませた。

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