シネマ☆トリップ！｜リアクション

シネマ☆トリップ！

●マジックウェスタン☆トリップ！

　サッカー少年である鎌八まもるは最近始めたバイト先のオークレイ牧場のミニシアターで、西部映画とファンタジー映画の問題作とまで言われた映画をノリノリで見ていた。
　そして、瞬きをしたその後。何故か荒野でペガサスに乗っていた。もちろんお約束のように、風に吹かれて転がっていくあの丸い草もあった。
　腰には複雑な紋様が刻まれた魔法銃、ピースメーカー。そして使い慣れた生きた投げ縄に幸運の蹄鉄があった。はて、自分は何をしていたのか。

「あ、そうだ。オレはこの先の牧場の用心棒をやってるんだった！」

　そして牛泥棒を追ってここまでやってきたのだ。もちろん、牛も幻想生物だ。なんたって羽が生えている牛なのだ、飛べないけど。
　ふと、目の端に何かの気配を感じてまもるは電光石火の速さで魔法銃を抜き、魔力を籠めて引鉄を引く。その狙いは的確で、光る銃弾は見事に牛泥棒を撃ち抜いていた。

「ふっ、安い魔法の匂いと酒の匂いが命取りだったな？　獲物を狙うときは風下に立ちな」

　安い魔法の匂いってなんだろう、自分で言ったもののよくわかんねぇなと思いつつ、牛泥棒の死体の横にペガサスを寄せる。すると、地面を蹄鉄が蹴る音が響いてきた。おそらく牛泥棒の仲間だろう、音の大きさと響きから人数を推測する。

「10人前後ってとこか？　おもしれえ、まとめてシロアリの巣にしてやるぜ！！」

　ハチの巣じゃね？　って顔をペガサスがしたけれど、まもるは気にしない。カウボーイは細かいことを気にしてはやっていられないのだ！　この映画もそういう映画だ、気にしたら負けなのだ。
　まもるのペガサスが嘶き、牛泥棒の仲間共へと威嚇する。一瞬、敵が怯んだ隙にまもるの愛銃が火を吹いた。

「おせえよ！　早撃ちってのはこうやるんだ！」

　光る銃弾が連射され、それぞれが敵を自動的に追尾してその体を貫いていく。これぞ魔法銃の真髄だ、多少外しても当たるのだ。それから、腰に下げていた生きた魔法の縄を構える。

「雑魚に銃はいらねぇだろ？　いけ！　スパイダーロープ！」

　まもるの手から飛び出した縄は敵の体に絡みつき、そのままサボテンへと縛り付ける。その姿はまるで蜘蛛の糸に絡め捕られた哀れな虫のようにも見えた。
　残りは一人、どうやら牛泥棒たちの頭目のようだ。他の悪党どもよりも面構えがそれっぽい。言ってることもそれっぽい。まもるはあんまり聞いてなかったけど。

「残ったのはお前一人だな、観念しな！」
「観念するのは貴様の方だ！　俺様の魔法弾を受けやがれ！」

　またも安っぽい魔法の匂いだなと、まもるは思う。こんなのに自分のピースメーカーはもったいない、本当ならこいつだってもったいない所だが……と思いながら幸運の蹄鉄を手をかける。

「腕に自信があるなら撃ってきてみな。お前の頭に蹄鉄のアクセサリーを飾ってやるよ！」
「抜かせ！！」

　頭目が魔法銃を抜き、まもるへと向かって撃ち放つ。それと同時にまもるの手から投げられる蹄鉄は、まもる目掛けて迫りくる魔法弾を弾き、そのまま頭目の頭へとクリーンヒットしたのであった。

「ふっ、悪は滅びるのさ……。ハイヨーシルバー！！」

　あっ、ペガサスの名前はシルバーだったんだと思う間もなくカウボーイハットを被り直し、ペガサスの手綱を引く。背景は夕焼け、まさにエンディングに相応しい場面。悪党を倒した用心棒ことカウボーイまもるは、羽根の生えた牛を引き連れて牧場へと戻るのであった……。