焼きそばパン再び！　あの壁を登れ！｜リアクション

焼きそばパン再び！　あの壁を登れ！

☆ついに決着！

　蛇那伊が、修が、夏朝が、一馬が、刀が、屋上へ手を伸ばす。
　月乃も、碧南もそれに続いた。
　
　真っ先に登りきった蛇那伊が呼吸を整える。
　ろっこんでの妨害への警戒も怠らない。
　そしてほぼ同時にたどり着いた者たちが手を伸ばし、声を上げた。
「焼きそばパンドリームウルトラＤＸバージョン頂戴！」
　屋上に着いた修は温存した体力でダッシュしていた。
　最後の一瞬まで勝利を諦めず手を伸ばし叫ぶ！
「お姉さん、焼きそばパン～ドリームウルトラＤＸバージョン～ください！」
「美波瑠璃　星影夢（びばるり　ぽえむ・自称）さん！」
　刀は調べておいた、パンを売ってくれるおばちゃんの名まえを呼び、『焼きそばパン、ドリームウルトラＤＸバージョン下さい』と書いた紙と小銭を取り出した。
「焼きそばパン、下さい！」
　夏朝も、息を切らせながら手を伸ばした。　

　購買のおばちゃんこと美波瑠璃　星影夢さんは、にっこりと微笑むと、お金を受け取った。
「はい、『焼きそばパン～ドリームウルトラＤＸバージョン～』」
　ただ一人の勝者の大きな手のひらに乗ったそれは、皆の目にキラキラと輝いて映った。
　それから星影夢さんは皆に向き直り言うのだった。
「あとは普通の焼きそばパンしかないけど、いいかしら？　ここまで来た人は特別価格１００円ね。はい、まずは御剣刀くん。惜しかったわね」
　名前を呼ばれてそちらに気はとられたけれど、星影夢さんはプロとして公平さを貫いたようだ。

「……もう動けない」
　修がパタリと倒れる。
「買えたら、ゴリラ役さんも一緒に、皆で分けて食べたかったんだけどな……」
　その隣に、よろよろと夏朝が座り込む。
「ああ……みんな、よくやったよな」
　一馬が爽やかに微笑み、皆の健闘を称える。
（焼きそばパンも旨えけど、それ以上のものを得た……なんて照れくさいから言わねえけどさ！）
「楽しかったー！」
　月乃も、笑顔で汗をぬぐった。
　体育科にとっては、心地よい疲れだ。
　碧南は思い切り体を伸ばす。
「さっきのお姉さんにスイーツごちそうになれなかったの残念だなあ……」
　また会えた時のために、何をごちそうになろうか考えておこう、と思う碧南だった。

　パチパチパチパチ……
　購買のおばちゃんや熊先生たちから、拍手が沸き起こっていた。
　勝者は、尾鎌蛇那伊だった。
　蛇那伊は焼きそばパンをかざすと、下で見ているギャラリーに向かい手を振った。
　大きなどよめきと拍手が巻き起こる。
「えーっと、半分……は、無理よね。それじゃ私はこれで」
　退散しようとする木鈴寧々子に蛇那伊がウィンクする。
「あら、チューしてくれるの？」
「え、えーっと、ほっぺになら……」
　たじろぎつつ言う寧々子に蛇那伊は笑う。
「残念でした♪　応援してもらったのはありがたいけど、見てるだけの人にはあげられないわ」
　そして取り出したパンを半分に割ると、屋上にたどり着いた皆に向け半分差し出す。
「よかったら分けましょうか」

　一口もらった『焼きそばパン～ドリームウルトラＤＸバージョン～』は、言葉に尽くせぬ美味しさだった。
　ちょっぴり汗と涙の味もしたかもしれない。

　落ちても地道に登りなおした楓は、落ちた写真やイラストも無事回収し、依頼された人数分の焼きそばパンを買って帰った。
　
　そして普通の焼きそばパンを買って食べながら、夏朝はつぶやく。
「これもとっても美味しいよ」
（僕にとっては、登りきって買えて食べれるこのパンはドリームウルトラＤＸって位、特別なんだから！）

　ちなみに壁のボルダリングコースは、昼休み終了後あっけなく撤去された。
「面白いのに……」
　と理事長が残念がったとか。　

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あとがき

担当マスター：天村花海
ファンレターはマスターページから！

熱く楽しいアクション、ありがとうございました。
揺れるロープ、登るのをやめたら落ちるしかない厳しさを感じつつ、コメディエアーのおかげもあって楽しく書かせていただきました。
ボルダリングの経験はまったくないのですが、ちょっと挑戦してみたくなりました。

１位が誰になるかとても迷いましたが、優勝できなかった皆さんごめんなさい。
焼きそばパン争奪戦はまた形を変えて行われると思うので、ぜひまた挑戦してみてください。

ボルダリングの壁、残しておけたら楽しそうだったのですが撤去となりました。
壁の破損部分はコメディエアーの影響ですっかり元通りになっています。

それでは、次回餅つきでお会いしましょう。

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