緑きらめく動物園で｜リアクション

緑きらめく動物園で

●そうして……●

　さらさらと、緑の枝葉を浚う爽やかな風が、心なしか涼しく感じられるようになってきた。
　通り雨に濡れた路面も、もう乾いている。
「皆さん、ありがとう。お陰様で、サルたちは元気を取り戻してくれたと思います」
　竹山さんは深々と頭を下げた。
「僕や飼育員のみんなで、皆さんから教えて貰った事をヒントに、もっと動物たちが楽しく過ごせるような……お客さんたちにも楽しく過ごして頂けるような工夫をしていくつもりです」
　決意の言葉に、ささやかながら温かい拍手が贈られる。
　そして、竹山さんの『これは！』賞は、サッカー……とまではいかないものの、ボール遊びをサルたちに教えたシダ美穂戸と緑野毬藻仔に贈られる事となった。
「細かなルールを教えるのは難しいかも知れないけど、色々と応用を利かせて楽しいシステムが出来たらと思います。それから……」
　竹山さんは他にも、好意でフリーパスを贈りたい人たちがいるのだという。
　黒依アリーセと市橋誉、そして夢宮瑠奈の三人だ。
「あの時、どうしようもなかった場の空気を盛り返して、獣舎に篭っていたサルたちが外に出る切欠を作ってくれた事……本当に感謝してるよ」
　人の好い笑みを浮かべた竹山さんは、とても嬉しそうだった。
　彼女たちが伝えた音楽や踊りもちょっと形を変えて、サルたちに受け継がれていくのかも知れない。

　

　そうして、ゴールデンウィークが明けた後――
　真央の提案により、サル山前のパフォーマンスの場は残される事になった。
　通行人の邪魔にならない程度のスペースに、雨に濡れても消えない塗料で白線が引き直され、今でも時々腕を磨きたいお笑い好きの若者が吹っ飛ばされている。
　サル山の比較的平坦な場所には、飼育員さんお手製の小さなゴールポストが置かれた。
　サッカーのルールがサルたちに浸透するかは分からないけれど、ゴールポストも遊具の一部のように使われている。
　竹山さんは目下、的当てゲームのように果物の絵が描かれたパネルにボールを当てると絵に描いてある果物を切ったものが出てくるという装置を作れないか奮闘中だという。
　また、サルに与える餌の配分を見直し、11時と14時に来園者にも見える場所でおやつをあげる試みが、早速行われ始めている。
　これを『おやつタイム』として、上手くいけば他の動物にも導入しようという話も持ち上がっているらしい。
　的当ての装置が完成した暁には、おやつタイムに設置してサルと来園者ともに楽しんで貰えるようにする事が目標のようだ。
「おさるさん　はなうた　ちょっと変」
　サル山前の手摺に凭れ、美穂戸は毬藻仔と肩を並べてサルたちの様子を眺めている。
　一部のサルは時折、瓶や洗濯板、バケツベースで気侭に音を立てるようになった。
「ンーンフー♪」
「フー♪」
　彼らの演奏（？）に合わせて、鼻歌を歌うサルもいる。
「でも、なんだか和むよ。可愛いし」
　毬藻仔は頬杖を突いて笑った。
　彼女がプレゼントしたボールは、若いサルたちが主に遊んでいるようだ。
　ゴールポストの意味が分かっているのかいないのかはイマイチ分からないけれど、大きな喧嘩もなく楽しんでいる姿を見て、まあ良しとしたいところだ。
　パンチはボスらしい威厳を取り戻して、お山の天辺でどっしり構え、きりっと周囲を見渡している。
　けれど、モン吉のポジションは相変わらずだった。
　今日も彼は、隅っこで大人しくしている。
　でも……。
　モン吉と群れの他のサルたちも、今までとは少し違う関係を築いているのかも知れない。
　おやつの時間になれば、モン吉も果物を受け取れるようにパンチがきちんと整列しているのもあるのだろう。
　それは、ボス猿が群れの一員として認めている証だ。
　今日も今日とて遊びに来ていたチカが、モン吉と顔を合わせて屈託なく笑う。
「よかったね、モン吉」
「キィッ」
　彼の鳴き声は、心なしか嬉しそうだった。

　因みに月詠が作った猿菩薩像は、券売所券受付のカウンターに飾られて、入退園する人々を穏やかな表情で見守っている。

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あとがき

担当マスター：羽月ゆきな
ファンレターはマスターページから！

『緑きらめく動物園で』リアクションをお届け致しました。
気持ちの良い気候の中で、ほのぼの・のびのび・時に面白おかしく過ごして頂きましたが、いかがでしたでしょうか？
動物園ネタはプレシナリオの頃からこね回していたのですが、当時は要素を色々出しすぎて収拾がつかなくなってしまい、あえなくお蔵入りに……。
時を経まして、お猿のネタは時期的にも丁度良くなったな～と思っております。
NPCに関してもちょっとした試みを行わせて頂きましたが、出てきた課題などを見直させて頂き、より良いシナリオ作りの参考にさせて頂く所存です。

参加者の方々のアクションにより、サル山及びまたたび市動物園に以下の変化がありました。
・サルが五月病から回復した。
・サル山内に小さなゴールポスト設置、ボール遊びするサルが見られるようになった。
・サル山に置かれた瓶などの簡易楽器で音を立てたり、鼻歌を歌うサルが現れた。
・『おやつタイム』が実施されるようになった（現状はサル山のみ・職員たちが工夫の最中）
・サル山前の通路にあったパフォーマンススペースは、そのまま残される事に。
・猿菩薩像が正面ゲート側の券売所けん受付のカウンターに置かれた。

……挙げただけでも、話題になりそうな要素がいっぱいですね！
お笑いで真っ向勝負、という方は思ったより少なかったですが、様々な方法でサルたちを楽しませる工夫をして頂き、ありがとうございました！
飼育員竹山さんの『これは！』賞は【もこシダ】ことシダ美穂戸さんと緑野毬藻仔さんコンビが選ばれました。
本来は一組のみの選出予定だったのですが、判定による展開で差し上げなければ嘘だろう、と判断致しまして、アリーセさん・誉さん・瑠奈さんの三名にも年間フリーパスを進呈という事になりました。
おめでとうございます！
既にフリーパスをお持ちの方は、現在持っているものの期限が切れた後に新しいものを、という形になります。

今回のシナリオは無事幕引きとなりましたが、また別のシナリオ、別のマスターの手により動物園を舞台としたシナリオが展開されていく事と思います。
また動物や飼育員さんが困ったり悩みを抱えたりという事もあるでしょう。
その際は、是非ご協力をお願いします。

・少々気になった部分
シナリオガイドで特記されている事項は、アクションに書かれている内容が条件に満たない場合、失敗として扱う可能性があります。
要綱を確認して頂き、それに沿った内容をご記入下さい。
出来る限りはご希望に添いたいのですが、きちんと条件を満たすようご記入下さった方に対して不公平になってしまうと、本末転倒なのです。
また、ろっこんの性能などの補足が自由設定欄に記入されていても、場合によって採用出来ない事があります。
基本的にはろっこん欄の説明と、使い方の工夫で勝負！　という事で、ご了承下さい。

次回担当シナリオは既にガイドが公開されておりますが、よろしければこちらもお楽しみ下さい。
この度はご参加頂き、ありがとうございました！

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シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧