みんなショタったらいいじゃない（例外もあるけど）｜リアクション

みんなショタったらいいじゃない（例外もあるけど）

「なにか勇気がでるものがあればいいんだけど……」
　ロベルトがぽつりと呟くと、悠月は「しょうがないな」というようなそぶりでもう一度ピアノに向かう。
「弾いてやる。だから、歌え。歌って勇気を出せ」
　そういってよく小学校などで歌われる、元気が出るような合唱曲を奏ではじめる。悠月は不敵に笑って、伸びやかに歌い始めた。
　最初はあっけにとられた３人だが、ロベルトが一緒に歌い出すと露草たちもつられて歌い出す。明るくて、元気が出るような、それでいて勇気が出るような歌を２、３曲続けて歌った。
　しばらく様子を見ていた３人だが、ややあってゆっくりとだが手を動かす。ロベルトに拾ってもらった銀食器を手にした露草は、１つ頷く。
（折角用意して頂いたのに……残してしまっては失礼が過ぎる……！）
　意を結して丁寧にナイフとフォークを使い、フォアグラを切る。そして、おもむろに口へと運べば高級感溢れる味わいが口の中に広がった。
（あぁ、あぁぁ……おいくら万円が……お年玉何十回分がお腹の中に……！！）
　先ほどまで呼吸も荒く、心臓もばくばくと大きな音を立てていた。だけども皆で歌った歌に勇気付けられ、心が落ち着いた。それでも、高級食材は緊張してしまう。時折飲むお茶に癒しを憶えながら、露草は只管高級食材と向き合っていく。
（本当にこれ、苦手だけど……、いいトコみせたいよねっ）
　なつもなつで目を瞑り、イナゴの佃煮を口にした。独特の食感に思わず咽そうになるも、がんばって飲み物と一緒に飲み込む。綺麗な箸の使い方で次々に食べるも、必死なので普段の余裕がなくなっていた。がんばりきるまでは、目の前のお姉さんを口説くことも出来ないだろう。
（あぁ、もう！　ここで逃げたら男じゃない！　……ってホントは男じゃなくて女なんだけども～～～っ！）
　碧南も震えながら箸を手に取り、ねばねばぬるぬるとしたサラダを口にする。喉に流れていく食感に、思わず手を止めそうになるも、やはり意地がある。頑張って食べていく。
　悠月がピアノの椅子に腰掛けたまま３人の勇姿を見、ふん、と鼻を鳴らす。といっても照れ隠しで、内心ではちょっとだけ「よかった」と思っているようだ。
「なんだ、できるじゃないか」
　彼がそう呟いたとき、３人はどうにか頑張って全部食べ終えていた。

　――ごちそうさまでしたっ！

　露草、なつ、碧南が口を揃えてそう言えば、お姉さんはにっこりと微笑む。そして、やさしく３人の頭を撫でて、
「よくできました」
　とほっぺにキスしてくれたのだった。うしろではロベルトが「よくがんばったね！」と一緒に喜んでくれていた。うれしくなって３人でハイタッチをしていたものの、ふと、露草がぽつり。
「……お支払いが……」
「「えっ？！」」
　達成感を憶えていたはずの露草が、席を降りた途端その場に倒れこむ。どうやらどれだけお金を使うのかを想像して気絶してしまったらしい。大変だ、とロベルトが抱えると、お姉さんが「お金なんていらないのに……」と苦笑し、ベッドのある部屋へと案内してくれるのだった。