みんなショタったらいいじゃない（例外もあるけど）｜リアクション

みんなショタったらいいじゃない（例外もあるけど）

結：お菓子の家は宴会場？

　――お菓子の家。

　美味しそうな匂いが溢れるその隅っこで、ちょっとぼさぼさした灰色の髪した男の子が縮こまっていた。浅葱あやめである。
（なん……なんですか、これ……。か、身体が小さくなって……）
　突然の事に驚き、ちょっとびくびくしながら辺りを見渡していると、知らない男の子があたりをきょろきょろとやってきていた。

「すっごくいい匂い！　ふんふん、こっちとか美味そう！」
　目をキラキラさせた７歳ぐらい……に見えて９歳ほどの姿になった男の子は、卯木衛であった。因みに今のあやめと見た目的にはあんまり変わらない事を付け加えておく。
（そういえば、なつはどうしてるんだろ？）
　衛は途中で別れた友達、立花なつの事を思い出した。衛はなつに「俺はあっちのお菓子の家にとつげきするな！」とすっごく生き生きした駆け足でここまで来たが、今になってなつの事が気になった。そんな彼が必死になってイナゴの佃煮を食べていようとは夢にも思わないだろう。
　だが、小さくなった手足を見、衛はぐっ、と手を握り締める。元々背が低めの衛だが、この姿になったばかりの時はちょっと取り乱したのだ。
（せっかくのびた身長がぎゃくもどりだし、なんとかしないとな！）
　お菓子の家を探検しつつ、外に出られない事を確認すると……彼はクッキーで出来た壁を見つめた。
　ここへ来た当初は「子供になったからっておかしでよろこぶとおもうなよー？」など言っていたものの、やはり美味しそうな匂いには叶わなかったようだ。
「この壁……チョコレートクッキーか？　これ、食べたら出られたりしないかな。試してみるか」
　そういい、衛はさっそくクッキーの壁を割って食べ始めた。

（うう、なんでこんなことに……。とにかく、なんとかしないと……）
　泣きたくなる気持ちを抑えながら衛とは反対方向に進むあやめ。だが、そこで見かけたのは……。
「動きづらいぜー……。なんじゃこりゃー！？」
　と声を上げる酒浸朱蘭の姿だった。朱蘭が顔を上げると、あやめと目が合う。彼女は知り合いと出くわした事でちょっとだけ安心したのだが、それはここだけの秘密である。
「あれ？　もしかして……あやめさん？　へぇー若いときはそんな感じなんだなー？」
（うーん、……髪の毛は黒かったし、まだ眼鏡ではなかったけど……）
　朱蘭の言葉を聞き、己の幼い頃を思い出すあやめ。彼は小さく微笑みながら口を開いた。
「こ、こんにちは……、………どうやら、そのまま、小さくなってしまったようで………」
「ふむ……。動きづらくてやっかいだよなー」
　朱蘭が相槌を打ち、あやめは小さく頷く。と、いつのまにかビスケットの壁に焼印のようなものが浮かび上がる。内容はただ一言。『出たいならば、魔法の鍵をみつけよ』である。
「これが課題……でしょう」
「よっし！　手分けして探そうぜぃ！」
　朱蘭の提案に、あやめは１つ頷く。２人はとりあえず鍵がありそうな場所を考え、あちこち探してみる事にした。
　そして、その文字は別の場所にあったテーブルも浮かんでおり、衛が１人息巻いていた。彼はがりっ、と折り取ったテーブルのビスケットにかじりつく。壁をネズミのように齧っていた衛だが、どんどん修復されていく様子に『無理だ！』と悟ってしまったらしい。
　壁を突破する事を諦めた衛は、窓の縁にあったドロップを１つ口に入れて、辺りを見渡す。
（この辺りで鍵がありそうなのは……下？　良く探してみるぞ！）
　衛はしゃがみ込み、鍵が落ちていないか、あるいはどこか床に挟まっていないか、くまなく探し始めた。