みんなショタったらいいじゃない（例外もあるけど）｜リアクション

みんなショタったらいいじゃない（例外もあるけど）

（３０分経過）

　あやめはそれから、すっかり出来上がってしまった朱蘭と衛に振り回されっぱなしだった。
「ん～？　これ甘いなぁ～」
「オレンジジュースだから……」
　何故か用意されているオレンジジュースを飲んで首を傾げる朱蘭に、遠慮がちに突っ込むあやめ。衛は衛で無邪気に歌いながら近くにあった、スナックで出来たランプシェードを片っ端から剥いでいる。
「こっちのスナックも美味しいぞー！」
「むぐむぐ……ホントだ！　あやめさんも食べてみろよ♪」
　朱蘭はぱっ、と顔を輝かせあやめに「あーんしなっ♪」とスナックを口に入れようとする。
「あ、あ～ん、ですか？」
　あたふたしてしまうあやめに朱蘭はに～、と悪戯っ子の笑みで迫る。
「食べなかったらこしょこしょだぞ～」
　その一言があったからかか否かは定かではないが、あやめは口に入れてもらう。程よい塩味としらすと青海苔の味がして美味しかった。
（すっかり、できあがってますね……）
　自分もろっこん水の影響でふわふわしているなか、あやめは内心どうすればいいのか、困ってしまっていた。

　しばらく宴会を続けていた朱蘭なのだが、ややあって大きなあくびを１つ。
「むにゃ……、まだまだ飲めるんだけどなぁ……」
　と、そんな事を言いながらテーブルに倒れこみ、眠ってしまった。愛らしい寝顔を見せる彼女に、衛とあやめは少しだけほっこりする。
「ん～、なんかこう、まだふわふわする～」
　衛はろっこん水の影響をまだ受けていたものの、テンションが落ち着いてきたようだ。あやめはそっと朱蘭から眼鏡を取り戻すと、すぐさまかけなおす。そして改めて辺りを見渡した。はっきりと周りが見えた事で、あやめは心が落ち着き、周囲を注意深く見る事が出来た。
　すると、先ほど寄りかかった壁が、実はキャビネットだという事がわかる。そして、その高いキャビネットの上には……鍵のようなものが置いてあるように見えた。
「アレ、ですかね？　でも……台が……」
「俺ならこれぐらい軽いぜ！」
　そう言うと衛はつま先で床を軽く蹴った。とたんに、ぽーん、と高くジャンプ。ぱっ、と鍵をキャッチして降りてきた。彼のろっこん『月面ラビット』の効果だ。
　鍵を手にした衛に「凄いです……」と、拍手するあやめ。
「どーだ、高いところのモノだってらくしょーだぞ！」
　衛はドヤ顔で、『褒めて！　褒めて！』といっているように見えた。それがちょっと可愛く思え、あやめはくすっ、と笑ってしまうのだった。

　こうして、『魔法の鍵』を手にした３人だったのだが……未だ、朱蘭は起きない。
「どうしよう？　なかなか起きねぇな……」
「抱えて連れて行くこともできませんね……」
　どうにかして起こすしかないな、と衛とあやめは顔を見合わせため息をついた。だが、あやめもまた、物凄く眠たくなっていた。
「少しだけ……休みたいです」
「んー……、俺も～」
　どうやら跳ねたことで酔いが回ったのか、衛も酷く眠たそうだ。少しだけ休もう、とおもった２人なのだが、ややあってすうすうと寝息を立て始めた。
　先に眠っていた朱蘭があやめを枕にし、それなのに「うぅ、重い……ごめんなさい……」と謝るあやめ。そんな２人の側で蹲る衛。３人は優しくて甘い香りの中、穏やかに眠っていた。

　と、その時。

　――カラーン！

　１つ、鐘がなる。洋館で、牧場で、原っぱで、少年たちは皆、この音を聞いた。

　――カラーン！

　鳴り響いた鐘の音が、周りの景色をぼやかしていく。夢の時間は終わりだ、というようになり続ける鐘の音に、世界は色褪せてほどけていく。誰もが暖かな物に包まれるような心地を覚えながら、とろり、とろりと眠り始めた。

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