ラン・ラン・ラン！　｜リアクション

ラン・ラン・ラン！　

『暗殺拳』の使い手……？」
　いわれなき警察の誰何に、志波武道は眉を顰める。

（意味が解らないYO！）

「きーもちー！」
　と、爽快な気分で夜のマラソンを堪能していた矢先のことだ。
　冬の最中とはいえ、日中は風もあり、比較的温和で湿度もあった。
　やはり冬の夜のマラソンは、穏やかな日に限る。
　心身ともに凛冽な気分になり、少しばかり息を整えていると、急に警察に呼び止められたのだ。

　写真を突きつけ、訳の分からないことをまくしたてる警察を、武道はじっと観察する。
　どう見てもまともじゃない。
（……錯乱しているのか？）
　それにしては、とんでもないわりに、筋が通っている。
（まさか……神魂？）

　不意に、夜空に雲が巻いた。
　風が、さあっと立った。
　
　本能が警鐘を鳴らした。
　さっと身を翻し、裏路地へ飛び込む。
　追いかけてきた警察の背後に回り、首筋に手刀を一発。
　ただの一撃で、警官は昏倒する。

　志波武道のろっこん『スイ・マー』。
　ついた部分の神経、嗅覚を麻痺させる。
　荒事を好まない、平和を愛する彼にふさわしい、敵を無力化させる技。
　だが、この状況では、思わぬ方向に作用する。

「殺人拳！」
　背後から声が飛んだ。
　見れば、新たなる警官。
　そして足元には、昏倒した警官。
　図らずも、疑いを実証させるような状況。

（まずい……逃げなきゃ！）
　

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