１１月の★ハッピーバースデー｜リアクション

１１月の★ハッピーバースデー

☆１８日

　放課後。寝子中２年の月守輝夜は、旧市街の青木慎之介の家に向かっていた。
（慎之介くんの誕生日だからプレゼントを渡してお祝いしよう！　喜んでくれるかな？）
　本当は学校で「おめでとう」を伝えたかったけどタイミングを逃してしまった。
　爽やかで明るいイケメンの慎之介には友人が多い。
　友達に冷やかされては慎之介も嫌だろう。
　ご近所さんだから家まで行ってみよう、とやってきたのだ。
（たぶん色んな友達から祝われてそう。もしかしたら帰りが遅いかな？）
　庭先を見ると、慎之介のクロスバイクがない。
（やっぱり。帰るまで待っていよう）
　しばらく待っていると、自転車の音が聞こえた。

「月守！　俺に用事か？」
　お気に入りのクロスバイクに乗った慎之介が顔を輝かせた。
「あ……うん。誕生日おめでとう！」
「あ……サンキュー！」
　二人は顔を見合わせ、少し照れた。
「１４歳になるんだね。ちょっと大人になった……のかな？　私も来月には追いつくからね」
　なんだか慎之介の顔が赤い気がして、意識してしまう。
「おう、もうボーイじゃないぜ！　月守の誕生日はクリスマスだもんな」
　そんな風に笑った顔はやっぱり少年に見えたが。
「あっ、忘れないうちにプレゼント渡さなくちゃ」
　輝夜は１５センチ四方の箱を差し出した。　
「はい、誕生日ケーキ。お母さんと一緒に作ったから味は保証できるからね」
　小さな誕生日ケーキには、チョコで「たんじょうびおめでとう」と書いてある。
「サンキューベリマッチ！　月守のお母さんのケーキ美味いもんな」
　輝夜も家庭科が得意だと、慎之介は知っているはずだが照れ隠しなのだろう。
「あ、それと……」
　輝夜はそっと、可愛くラッピングされた袋を差し出した。
「こっちは返品可能のプレゼント。手作りのお守りなの。バスケ部だけじゃなく色んな部活に顔出してるから試合に出る事も多いと思って」
「ホワイ？　なんで返品可能？」
「他の人と被ってるかもしれないし。微妙だったら返してもらおうかと」
　喜んでもらえるといいけど、心配だったのだ。
「かぶってねーよ！　お守り手作りすんのなんて月守くらいだろ。もらっとくよ」
「良かった。勝てるように願いを込めて作ってみたの。また友達と応援に行くから頑張ってね」
「ああ、任しとけ！」
　それから慎之介は、なんでもない風に言った。
「なあ、上がってくか？」
　軽く言っているが、妙に気持ちが入っている。そんなふうに言われると、なんだかドキドキしてしまう。
「うーん、今日は帰るね。家族でお祝いするんでしょ」
　嬉しかったけど、今日は輝夜は帰ることにした。
「ああ……それじゃ、またな！」
　慎之介の表情は、残念なようで、それでいてほっとしたようにも見えた。
　なんでかな、と不思議になりつつ、手を振りながら輝夜は思う。
（受け取ってもらえて、良かった……）
　