紫陽花屋敷の噂｜リアクション

紫陽花屋敷の噂

＊神木煉は出陣する

「誰かすでに紫陽花屋敷に行っているみたいだな」

煉は自室のPc画面を見ながら小さくつぶやいた。
薄暗い室内に画面の光だけが浮かんでいる。
画面上には「彼我花」の検索ワードで出された結果がいくつか表示されていた。

その多くは彼岸花の検索結果に飛ばされているが、最後にひとつだけ。
「行方不明者リスト」の検索結果が表示されていた。

彼我花紫(ひがはなゆかり) 彼我花陽(ひがはなよう)
そして、彼我花花南(ひがはなかな)
関係性は母子。行方不明としての捜索願が出されたのは３年前の６月。
出したのは３人の住んでいたアパートの管理人。
習慣のように晩ごはんのおかずをおすそ分けしに行ったところ、部屋の電気がついたまま行方が分からなくなったそうだ。
この３人の失踪時の住所は本土となっている。

「それがいったいどうして、寝子島の紫陽花屋敷と関係があるんだ」

煉はシャベルとＬＥＤライトを持つと、足場の悪い九夜山を上って行った。

＊鰐淵碧緒は考察する

同じようにして、ねこったーに載せられた米太郎の写真を見ていた人物がいる。
その人物、碧緒はねこったーやチャットルーム「ワースト」の情報、行方不明者リストを照らし合わせてひとつの仮定を導き出していた。

「彼我花母子は元々は寝子島に住んでいたのではないか？それこそ、紫陽花屋敷に。
行方不明になった理由はわからないが、それならば彼女が紫陽花屋敷に関係するという定義は崩れない」

「では紫陽花屋敷と彼我花紫の関係性は？住んでいた、以上に執着を示す何かがあるのだろう。３年も前の話を今になって掘り返す必要が、果たしてあるのだろうか」

「その執着の元はなにか？それは紫陽花屋敷に向かえば分るだろうか」

彼女は緑色のレインコートを着込み、紫陽花屋敷へ向かった。

それぞれ、思惑の行動をとるために。