寝子島☆飛行船の浪漫譚？！｜リアクション

寝子島☆飛行船の浪漫譚？！

　そこまで言い、顔をそむける。
「わかっているわ。今の私には、何もできない」
　葉月の言葉に、牡丹はどこか悲し気に頷き、奥へ進む。そして、意識を失った整備士と、壁に背を預けため息をつく遥斗の手当てをする。
（焦ってはいけない。このままでは、また失敗してしまう！）
　牡丹は、一度深呼吸をして、再び手当てをするのであった。

（五十嵐先生！）
　人質として連れていかれた尚輝を心配した御巫時子はその場が混乱しているのを良い事にろっこん『鳥の囀り』の進化能力を利用して雀へと変化していた。元々は空を良く鳥たち相手にろっこんを使って話していたのだが……。
（まずは情報が必要です！　乗客の中にも窃盗団の人が紛れているかもしれませんし……）
　小柄な体を利用し、時子は高くて狭い場所から会場を見渡した。けれども怪しい人間は見当たらない。
（巧妙に演技しているのでしょうか？　それとも……？　もっとよく見る必要がありますね）
　時子は隙間から出ると、飛行船内部を飛ぶ。そして、情報を少しでも得、味方だと信じている五十嵐研究所の仲間に会って共有したい、と考えた。
　サキリの命令で、実行犯のリーダーは人質をリッカルドと五十嵐博士、運転手２名のほか３人適当に選んでいること、おかしな行動をとれば人質の命はない事を乗客たちへと放送で伝えた。スピーカーを横切った際それを聞いた時子は音量にびっくりし、墜落しかけてしまう。だが、そこを救った者がいた。たまたま廊下にいた壬生由貴奈だ。
「ピチュッ？！」（貴女は？！）
「やっと飛行船の初フライトに立ち会えたと思ったら、また窃盗団かぁ……。ともかく、まだ捕まっていない人たちと協力して人質の解放と飛行船の奪還……かな？」
　受け止めた雀に笑いかけ、由貴奈はそろそろと船の中を歩く。そして目指すは……機関室。荒事が苦手な彼女は、自分のろっこん『ヘンドリック・モーメント』の進化能力で操れるものを見繕いにいこうと考えたのだった。

　【ファルコ窃盗団】の一員・鬼崎あやめは人質が拘束後連れていかれるのを見ながらわずかに口元を引き締める。諜報部所属の彼女は乗客の一人に紛れ込み、情報を集めるのが仕事である。今は、乗客たちが歓談とちょっとした食事を楽しむ展望ホールにいた。だが、【ファルコ窃盗団】からの放送と、リッカルドと五十嵐博士他数名が人質に取られた事実に皆戸惑っているように見える。
　彼女の目的も、サキリ同様雪乃を捕らえる事だった。そして、今。
（まぁ！　陸軍と海軍のお偉いさん方にリッカルドの秘書さんが居るじゃないですか！？　これは接近するしか……）
　今の彼女は商家の娘・国枝椿である。彼女は怯えた少女を装い、彼女に近づこうとした。だが、それよりも早く彼女に近づき、連れていく者がいた。八神財閥の御曹司、八神修である。
「俺と、結婚してくれませんか？」
　ハイジャック犯に出くわさずに済んだ島岡雪乃は、どうしようかと考えていた矢先、優雅に赤いバラを差し出した修にプロポーズされていた。それに思わず面食らう。だが、修は１つウインクするとそっと耳打ちする。
「脅迫材料にされないよう、正体を隠すためだよ」
「えっ？！」
　彼の言葉に雪乃は面食らったものの、少し緊張をほぐしたようだ。彼女はくすり、と笑って「そういう事でしたら」と頷いた。修は擬装用の指輪を取り出し、雪乃の指にはめる。
「ちょうどいいところに！　ちょっと話が……」
　そこに現れたさわやかな青年は、風雲児轟である。彼は修と雪乃のやり取りに、思わず身構えた。
「……なんか、出くわしちゃいけないところにきたかな？」
「いや、そういう訳ではない」
　修と雪乃は事情を説明し、轟は「そういう事か」と内心で納得する。そして、ちらり、と彼は周囲に目をやり……２人を庇う。
「お嬢さん、顔色が悪いようだけど大丈夫？」
「雪は、部屋で休んだ方がいいかもしれないな」
　その一言で何かを悟った修がそれとなく合わせる。雪乃がちからなくこくん、と頷けばチャンスとばかりに鬼崎あやめが駆け寄る。怯えた演技は払い、心配そうな顔で。
「あの、どうかなさいましたか？　お水でしたらこちらに」
「あぁ、すまない」
　修が受け取ろうとしたが、あやめは雪乃に手渡す。そして、そっとその手に触れて目を見た。
「持てますか？　ゆっくり、飲んでください」
「ありがとう、ございます」
　雪乃はそういって受け取り、あやめに助けられつつ飲み干す。あやめはコップを受け取ると一礼した。
「申し遅れました。国枝商会の娘の国枝椿と申します。私も皆様にご協力したいです。護衛ならば、腕に覚えがありますので役に立てるかと」

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寝子島☆飛行船の浪漫譚？！

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