裏腹な日｜リアクション

裏腹な日

●普通ですから

　いつも通りの朝。
「…………」
　登校中、ヨハン・プレストンは、ちょっとだけ違和感を感じた。
　それがなんなのかわからないまま歩いていると、重そうな荷物を持った腰の曲がった老婆を見かけた。
　気にせずいつも通り素通り……するつもりだったのに。
「重いでしょう。お持ちしましょう」
　いつの間にかその荷物を運んでいた！
「ご親切にありがとうございます。すみませんねえ」
　おばあちゃんがお礼を言うと。
(いや、こんなことするつもりはなかった)
　という内心の声とは裏腹に。
「……いえ、こういったことは普通ですから」
　まるで親切ないい人みたいな言葉が出てきた。
　普段無口どころか本当に口がないんじゃないかというくらい喋らないヨハンである。
「病院行く前に、娘のところに寄ろうかと思いましてな。ちょっと欲張って持ちすぎてしもうたんで」
「そうですか、わかりますよ」
　それが、話しかけられるままに親身な相槌を打っている。
　結局おばあちゃんの荷物をずっと持ってあげて感謝された。
（いったい何が起こったんだ）
　首をひねりながら学校へ向かうヨハン。
　しかし、これで終わりではなかったのである。

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