【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

55.

　近接戦闘ではおそらく最強の一角、演劇部。
　戦略が回り始め、常に最高打を繰り出せる射撃部。

　最悪の二チームを相手取って、しかし凛も瑠奈も引かない。
　この状況を、サイコーに楽しむことが、一番大事なのだ。
「あはは、コメディエアー最高！」窮地の極みに合って、凜が笑う。

　ピックで相手を処理しつつ、優は、判断に逡巡する。
　どちらか、狙われやすい方のフォローに入るのが彼の作戦。
（派手に目立っている方……。目立つってことは、それだけ、狙われやすいってことだからな……。
　隙があれば、こっちから風船を割ってやって……）

　ぴたり。
　優の手が止まった。

（……って、なんかこれ、二人をオトリにしてるみてぇじゃねえか……）

　優は顔を上げる。
　殺到する演劇部、射撃部に対し、二人は一歩も引かない。
　笑顔さえ見せ、二人は歌い続けている。
　その背中が、急に遠く見えた。

　――！

　ヘッドフォンからは、何も聞こえてこない……。

「だあ、くそっ！」

　何か言い知れぬ感情が、彼を突き動かした。
　ギターを構え、彼は凛と瑠奈の前に立っていた。

　予想外の行動に、唖然とする一同。
　やけくそで、優は叫んだ。

「しつこいヤローは嫌われるぜ！　俺の歌も、聞いていけよ！」

　今度の躊躇いは一瞬だった。
　ギターがコードを奏で、喉から声が迸る。

　彼の風船が割られるが、それは彼を高ぶらせる合図。

　♪溶ける様な暑さ　凌いでく熱さ
　　　最初の音から　全開で走り出す

　
　かつてネコフェスで演奏したオリジナルナンバー『フェス』。
　咄嗟に出てくる歌は、それしかなかった。

　秋口だというのに、暑さもないよな……頭の片隅で、そんなことを思う。

　♪想い込めた声に　強く弾く弦に
　　応える手　挙がってく　波の様に広がる

　傍らで響き渡る、聴きなじんだ声。凛だ。
　その瞬間時間は巻き戻り、秋はまだ彼方にあり、一同はネコフェスの熱狂にいた。
　須臾の間に夏は過ぎ、瑠奈の「じゃあねー！」の声とともに、軽音楽部は去っていく。

　射撃部もどさくさに紛れ、その場から消えた。

　サムズアップを向けてきた凛に、いつも通りの怠そうな目を向けて、優は少し照れくさそうに微笑んだのだ。

「ここへきて、男子諸君の熱い活躍が見られる。ウレシーナァ！」
　うきうきと解説する志波武道。
　
「それではここでいったん、情報局の五郎八ちゃんにお返ししまーす！」