【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

47.

　ひゅうと、風が鳴った。

「新聞部、体育科１年９組、後木真央さん……」
　張りつめた空気の中、音声のみの実況中継が響き渡る。
「『部活用に、デジカメとパソコンをあと一台づつ欲しいのだ、頑張るのだ～！』」
　目を細めて、肩にかけた新聞束から、新聞を一枚抜き取る真央。
　前後に結わえた風船が揺れる。
　先ほどはあっさりアフロ化させられてしまった。
　結構悪くない仕上がりで、ノリノリだったりするのだが、それはそれ。
　己で選び取ったアフロと、させられアフロは違う。
　アフロリベンジを硬く誓う。

「同じく新聞部、体育科１年１０組、常闇月さん」
　影に溶け込んで、その姿は見えない。
　潜伏役、奇襲役。少々のコメディエアーの不足は、他の二人が補てんしてくれる。
　それに、そんなものに構っていいられない。
「『お二人のために、頑張らせて頂きます……』」

「新聞部、普通科１年３組、椿美咲紀さん」
　真央に並んで、不敵な笑みを浮かべつつ、大型スマートフォンを取り出す。
　そのメモリーカードに存在する『ＢＬ』と名付けられたフォルダが、先ほどなぜか流出してしまったこと。
　それによって、刀、円、雅人の三人が、処分を免れたこと。
　それらをまだ美咲紀は知らない。
『ＢＬで命を救った少女』と、彼女が呼ばれ始めているのを、当人はまだ知らない。
　今はただ、部費争奪戦を駆け抜けるのみ。
「彼女のメッセージは……『真央ちゃんと一緒に！』」

「どっせえええい！」
　戦端が開かれた。
　新聞部は真央と椿のツートップ。二人が戦線を押し広げつつ、遊撃の月が戦場を立体的に展開する。
　再びのＭＵ砲。変幻自在の凶悪な陣形だ。
　デルタからナブラへ。三次元の立体的な戦闘が展開される。
　
「フッフッフ、記者とカメラマンと、突撃レポーターなのだ！」
　
　ここを先途と、真央はとっさに身を伏せる。
　その背後が、赤と黒に染まる。
　鉄の鳥が、大量の爆撃を投下する。恐怖のエアレイド。

「戦場カメラマンごっこなのだ！」
　匍匐前進しつつ、爆撃の火柱をかいくぐる真央。
　戦場を召喚できるカメラマン。戦場カメラマンである。
　アポカリプス・ナウ。地獄の黙示録である。

　咄嗟にプレパラート手裏剣で応戦する生物部。
　新聞ハリセンや、大型タブレットで防御する美咲紀。
　そのままハリセンを振りかぶる。
　繰り出される人体模型。頭部にハリセンがヒットする。
　放物線を描いてすっ飛んでいく人体模型の首。
　割ときれいに取れたので、接着剤で何とかなるか……そんな計算が、すばるの胸をよぎる。
「これが報道のちからなのです！」
　先ほどは報道の力で仲間を救い、今また報道の力で敵を倒す。
　トップ屋魂。非情な彼女。

　派手な攻撃の連続に、間断なく狙われる月のボールペンショット。
　安物で沢山購入でき、さらにワープロの普及により、実質用済み。
　なつかしのシューティングゲームのような、ボールペンの弾幕が生物部を襲う。　

　――やはり、強い！
　美野梨は、唇を噛む。
　先般、無傷で逃れたのがウソのようだ。
　まともに組み合っていたら、確実に粉砕されていた。
　不承不承、すばるの冴えに感謝をする。

　だが、此方も先ほどとは違う。
　全力をもって応じないと……。

「生物部、普通科１年４組、神野美野梨さん……」
　音声オンリーの実況中継が響く。
「『生物部の会計としては、負けるわけにはいきません。勝てるチームで』」
　そう、善戦した、なんていう言葉はいらない。欲しいのは勝利。
　補虫網でクラスター爆弾を掬いながら、美野梨は冷や汗をかく。
「生物部、芸術科１年８組、新井すばるさん……」
　地形を利用し、相手の特徴を見極め、的確に躱していく。
「『部費に余裕ができたら、念願の生物部　in　北海道、冬合宿だ。
　まってろよ、屈斜路湖のクッシー！　生物部が行くぞ！」
　これを書いたときは、意気軒昂としてた。
　ここまで苦戦するとは……思っていなかった。

　
　崩しやすしと見られたか、新聞部の攻撃が、美野梨に集中する。
　必死で庇うすばる。

（――）