【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

12.

　喧騒から離れた、講堂屋上。
　遮蔽物にじっと身をひそめ、夜海霧楓は運営本部に通信を送っていた。

（此方夜海霧。現在講堂屋上、中継用全体撮影入ります。どうぞ……）

　傍らのモニタで、自分の映し出した風景を確認する。

（ここから見えるのは、プール、噴水前、部室棟、武道場前で争奪戦中……）

　何重にも、異様な風景であった。
　このコメディエアーの影響下では、他人と見れば突進せずにいられない。
　明確な方針がなければ、直接攻撃を選択する。
　それを選ばない場合は、様々な予想不可のリスクを負わなくてはならない。
　ジャッジに注意を受けもするし、三分以上の戦線離脱は、強制的に戻される。

　とすれば、彼は参加者ではありえない。右腕に光る腕章。
　かれは、ジャッジであった。

　とある理由で、生徒会に恩義のある彼。
　恩は返す、の有言実行として、主に攻撃、防御方法への判定に回ることになった。
　罠などの隠密活動について造詣の深い彼。
　審判団にはまたとない、そしてルールの隙をくぐろうとする参加者には、これ以上厄介なものはない審判であった。

「――了解」実況班から最も距離ある場所を拡大。
「――了解」次の争奪戦を、カメラに捉える手前で中継切り替え。

「――了解」
　次の言葉に、楓はライフルを取り出す。狙撃要請だ。
　スコープに目を当てると、照準が合わせられる。
（自転車置き場……左端……針トラップ……確認）
　罠としての完成度も低い。
　効果のほども、的確ではない。
　何より、ダメージ喰らった側が面白くない。
　判断するまでもない。「排除対処」」だ。

「仕掛けた側には悪いが……踏まれる前に『運悪く』壊れてもらうぜ」

　十分に狙いを定めたあと、引き金がぐっと押し込まれ、かるい音が鳴る。
　針トラップは煙を上げて、その機構を破壊された。

「……次、北校舎二階。鍵穴トラップ……了解」

　どれもこれも、趣旨に合わない稚拙なトラップばかりだ。
　先ほどから校庭で、大量のトラップを仕掛ける部活……落とし穴、ワイヤー殺法、吊り上げ罠を大量に仕掛けている、探検部以外は、お話にならない。
　楓の審美眼にしても、探検部の拵える罠は、創意に富んで効果的だったが。
　それでも、コメディエアーに厳密に照らして、排除しなければならない。

　楓は、天を見上げる。
　講堂上空、めまいのするほど、空が深い。

　その時、胸の内ポケットで、携帯が震えた。
　外套を翻し、彼の姿は風景に溶け込んだ。