【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

11.

　動画配信を確認しながら、八神修は背中に冷や汗を感じた。
　彼の右手には、ものものしいライフル。
　今回彼は、射撃部でエントリーしていた。

【射撃部／クイックトリガー】

「派手に暴れたいけど我慢しなきゃね～」
　エアガン二丁をクイックドロウしつつ、日暮ねむるがつぶやく。
「――あー、だっる……」
　風船のついた頭を物憂げに振って、種田凜乃が言う。
　三人とも、物々しい迷彩服に身を包み、ゴーグル、バックパックなどを完全装備している。
　単なるサバゲ―以上に、どこの戦争から帰ってきたんだというくらいのリアルさ。
　物陰からじっと、様子を伺う。

「まあ、あたし頭悪いから難しいことわかんないから、作戦は八神に任せるよ」
　めんどくさがりだが、後輩の頼みは断れない凜乃。
　その言葉に、修は頷く。

　修の作戦は、物陰からの奇襲。
　華道部や新聞部のような直接火力とは違い、やはり射撃部の花形はスナイプ。
　だが、この作戦はリスクを伴う。
　三分以上隠れることはできないし、ジャッジからも目をつけられる。
　それでも、ルールぎりぎりの境界で、作戦を遂行する。
　射撃部らしく、自分らしい戦いを修は狙っていた。
「この部費争奪戦って、奪う事より奪われないことが大前提だからさ」
　修の作戦の意義を、直感で理解したねむるも頷く。

　だが、事がそううまく進まない。
　あちこちで起こる反則行為が、コメディエアーの濃淡を生み出し、エアーの流動が活発になっているのだ。
　こうやって隠れているだけで、エアーの加護が薄くなっているのがわかる。
　
　――もちろん、そんなことは先刻ご承知の射撃部。
　――ならば、応じた戦い方をするまで。

　廊下を突っ走ってくるダジャレ研究会の前に、射撃部が踊りでる。
　三人はしっかり足を踏ん張り、腰だめにする。
　衝撃を十分和らげる、射撃の基本に忠実な形。
　慎重に構え、照準を合わせ、息を吐いて……。

　そのままねむるは跳躍。
　二つに構えた銃を、相手の頭部めがけて打ち付ける。
　真面目な銃撃は効果自体は期待できない。ただ衝撃で相手は吹っ飛び、人型の穴を作る。
　風船が割れたことを確認する。
　まさかの『銃撃』である。
　二刀流の拳銃。そういう意味ではないが。

「まあ、撃てるんならあたしは文句ないけどね」
　頭を一つ振って、気だるさを振り払う。
　エアガンを突きつけ、精悍な笑みを見せる凜乃。
　咄嗟に体を伏せる敵。
「たぁ！」そのままエアガンから万国旗を打ち出し、装着したゴーグルを脱いで風船にヒット。
　そのまま銃を乱射し、びっくりさせてから後退。
　銃の効果は期待できないが、なに、雰囲気だ。
　
　匍匐前進からのアッパーカットで、フリスビーで風船を割る修。
　真面目な射撃と見せかけての、まさかの流れ。

――ライフルは、投げ捨てるもの。

　緊張と緩和、フリとボケという正統的なギャグの流れを踏襲している。
　だがコメディエアーの状況下では、悠長なネタ振りを行う余裕がない。
　早くボケなければならない。
　意に反して、膨大な風船を割る射撃部は、そうせねばならぬ状況にあったからだ。
　それでも戦線が崩壊しないのは、個々の戦闘能力が図抜けて高いからだ。

　――もう少し、コメディエアーが安定し、ジャッジが動き出せれば……。
　そうすれば、自分たちの作戦も回り出すだろう。
　極力戦闘は避けるという、本来の姿に作戦を戻せるだろう。
　あともう少し、堪えしのげれば……。

　――しかし、この悪い予感は何だ？