【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

9.

「新聞部なのだー！」

【新聞部／ＭＭＵ】

　顔を上げた梢に、どっごーんと突入してくる後木真央。
　くらくらする梢に、ずいとマイクが突きつけられる。
「恐縮ですっ！　新聞部ですけど、奇襲された今のお気持ちは！」
　椿美咲紀の突撃インタビューに、たじろぐ生物部。

　驚愕の速度であった。
　連戦による疲弊が、生物部にわずかなスキを作っていた。
　ヒュン！　飛来するボールペンに、すばるが反応する。
　梢の風船に激突すると思われたとき、人影がぬっと突き出る。
「ヲヲッ！」
　さすがの真央も、一瞬の躊躇。
　それは筋組織や体組織、骨格をあらわにした生物部の最終兵器。
　人体模型の、名誉顧問
　防御はもとより、いきなり見せることで、相手の不意を突く。
　一瞬の隙に、すばるは十分な間合いを作り、戦闘のゾーンを広げる。

　――お互いのフォローができるよう、近すぎず、遠すぎず移動。
　――フィールドワーク時のチームワークで、３６０度立体的に観察……。

　すばるの無言の指示で、それぞれのポジションを取り直す生物部。
　相手の出方がわからぬ以上、とにかく様子をうかがう。
　守勢上等。頭部にペンを突き刺した名誉顧問を見ながら、すばるは不敵に笑う。

　そんな生物部に、相対する二人の少女。
　胸元に覗く新聞部のメモ。腕にきらめく腕章。
　デジカメにスマホ、最新の取材装置を装備した椿美咲紀。
　新聞配達が使うヒモで、今までの校内新聞をつりさげた後木真央。
　新聞の過去と現代が交錯する。

　先ほどの攻撃を見ても明らか。新聞部は、美咲紀と真央の連携を徹底的に練り上げていた。
　個の敵に、つねに多数でかかり、俊敏さで圧倒する。　
　驚愕の密集戦法。
　完全無欠のＵＭ砲。衝撃のダーティなペアであった。

　ということは――すばるの頭脳が駆動する。
「そこだッ！」
　再び名誉顧問の眼球に、ボールペンが突き刺さる。
　真に警戒すべきは、遊撃班。

　ぶらり。
　屋上から、天地をさかさまにして、常闇月が立っていた。
　重力の存在を一切構いつけぬ、まるで天井に足が吸い付いたようだ。
（表も裏も歩けぬ半端もの）とは、彼女の弁。しかしそれは、善と悪、現実と虚構、正気と狂気を自在に往還できる、彼女の境界上の存在を示していた。
　ましてコメディエアーの状況。あらゆる物理法則など、彼女にはただの『矩』。
　今は二人の支援、そして遊撃こそが彼女の誇り。

　取り出した新聞を、真央はくしゃくしゃと丸めたかに見えると、そこには幾何学的に完璧な紙飛行機。無数に作られたそれらが、まとめて飛翔し、四方八方から襲い掛かる。
「世論はどこからでも飛んでくるのだ！　待ったなしなのだ～」鮮やかにキングギドラを折り、それも投擲。
　補虫網で躱しながら、生物部は躊躇する。
　決め手となる一手がない。
　おそらくコメディエアーの状況下で、あの新聞紙ガードを破れる武器はめったにない。
　プレパラート。効果は薄い。
　水流。先ほど使用してしまった
「……」
　すばるは意を決し跳躍。
　新聞紙を広げ待ち構える真央に、懐から取り出したそれを突きつける。
「……虫眼鏡！」
　背後には太陽！
　収斂し、プリズムを作る光が、ゆっくり励起していく。
（エネルギー充填率８０パーセント……偏向率極小……磁力問題なし……）
　レンズの表面に膨れ上がった光が、標的を捉え、無音のままはじける。

「今、太陽の力を借りて……必殺のサンビーム！」

　衝撃に跳ね飛ぶ真央。
　新聞は焼け、真央も無傷ではいられない。

　おお……！
　――見よ！

　全身を黒く焦がし、そして頭部は、ふたたび完璧なアフロだ！
「グルービー！」
　感嘆の声を上げるすばる。
　フィーバー！　
　真央を気遣いつつ、美咲紀はそっと、彼女のアフロをカメラに収める。

　その隙に、一時退却する生物部。

　風船一つで済んだのはもうけものかもしれない。
　華道部・演劇部との戦いで、すでに一の風船を失った生物部。
　いきなりの窮地である。　