天使が瞳をひらくとき｜リアクション

天使が瞳をひらくとき

◆
夜は、長い。
それが秋ともなれば、尚のこと。
いつもの、朝鳥さゆるなら。
夜の孤独を埋めるため、行きずりの相手や身体だけの付き合いの誰かと、快楽に溺れるだけの爛れた夜を過ごす。あるいはそんな気分になれない夜なら、睡眠剤で夢を見ない泥沼の眠りに就く。
だが今夜は、どちらにも身を沈めることができなかった。
こんな夜はむしろ、逆に孤独になれる場所が望ましい。
そうして足を向けたのは、教会の廃墟だった。都合のいいことに、今は誰も居ないようだ。

ブーツの靴底で、かつて神がいた空間の名残を踏みしだく。
夜闇を斬り裂くように振り向けた懐中電灯が、祈る天使の像を照らし出した。
神も人も居なくなった虚無の空間に、ただ一人取り残されて。それでもなお、信じることをやめようとしない天使を。
ここに居るのが、自分ではなく他の誰かだったなら。その姿に触発されて、祈りの一つも捧げるのかもしれない。
だけど、さゆるは。
何かを祈ることも、信じることも捨てた。……というよりも、元からそんな能力すらなかったのかもしれない。薄汚れた鉛を溶かした心で、そんなことを思う。
もし――そう、もしも。
何かに祈ることができたのなら、何かを信じることができたのなら――
「……」
無意味な思索を打ち切って、さゆるは小さく首を振る。
それでも、自分は救われない。何故なら、自分自身で救われることを諦めているから。
誘蛾灯のような紅を差した口元が、口角を上げた笑みを描く。そこに込められたのは、きっと皮肉。
諦めて、そして……自分を壊すことにばかり、執着している。狂的に、という言葉がきっと相応しいほどに。
そうして何度も何度も何度も何度も何度も何度も砕き続けてきた「自分自身」、その破片はもはや回収不能なまでに飛び散った。パズルのピースを全部ひっくり返してぶちまけて、挙句ぐちゃぐちゃに引きちぎってばらまいたみたいに。今更かき集めてみても決して元通りにはならないし、元通りにしようという気もない。
だって、それを自分自身が望んでいるのだから。
「疲れたというより、飽きてしまったわ」
吐き捨てるように漏れた言葉に、ふわりと寄り添う一つの影。
一匹の狐が、いつのまにか足元にぴったりとくっついていた。

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あとがき

担当マスター：風雅宿／癒雨
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どうも、風雅です。
まさかまさかのリアクション代筆……なんとか完遂させて頂きました。

おそらく、というかきっと間違いなく癒雨マスターがお書きになろうとしていたものとも、
PLの皆さんが癒雨マスターのリアクションに期待していたのとは違うものになってしまったとは思います。
ですが……風雅なりに、やらせていただいたつもりです。

それでは、またどこかで。

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