Kiss or Treat　～お菓子くれるかキスしてくれる？｜リアクション

Kiss or Treat　～お菓子くれるかキスしてくれる？

●幕間～厨房にて・４

　死屍累々の乙女の山の中に、黒こげになったあやめがどうっと倒れ込んだ。
　唇にはこってり、ルージュのあと。
　他の乙女よりいろいろな意味でダメージが大きそうだ。

「これで最後、かな？」
　夏朝が、中空のパネルを見上げる。ほとんどのパネルが明転し、ゲームの終わりが近いことを報せている。
「あと一人残っているみたい」
　陽毬が指差したのは、眼帯をしたハーピー少年の天吏だ。
　確認すると、マリアが攻略中らしい。
　夏朝はふと首を傾げる。
「マリアさんってちょっと変わってるよね。変わってるっていうか、キャラがときどきブレるっていうか？」
「たしかにねー。ミッシェルさんや小野田さんと無茶してることもあるし、かと思うと、灯君や楢木君とはロマンチックだったし？」
「そんなかんじ。……よくわからないんだけど、乙女ゲームの主人公って、そういうものなのかな？」
　乙女ゲーム、という言葉に反応して、告白の余韻に身を浸していた碧南が半身を起こす。
「キャラがブレるってのはあまりないと思うわよ。昔は自己投影しやすいように無個性の主人公も多かったけれど、最近はキャラクター性がはっきりしているタイプの主人公も多いわ」
「ふぅん……？」
「あっ。マリアがいいかんじよ。告白来るからみんな静かに！　正座して！」
　なにか引っ掛かるものを感じつつも、夏朝は言われるままに正座してスクリーンを見つめる。

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