Kiss or Treat　～お菓子くれるかキスしてくれる？｜リアクション

Kiss or Treat　～お菓子くれるかキスしてくれる？

【ハロウィン】乙女ゲーム『Kiss or Treat』

●悩めるフランケンとマリアの恋

　パーティのあとの静けさの中、フランケンの楢木春彦は庭園でひとり佇んでいた。
　夜露に濡れる薔薇のつぼみに視線を向ける。
（アイツは誰かにアノ言葉を言うんだろーか……）
　Kiss or Treat。一年に一度、乙女が口にすることが出来る言葉。
　愛の告白にも値するそれを、彼女は誰に問うのだろう。
　彼女――何かと声を掛けてくれた黒髪のマリアを、春彦はいつしか気に掛けるようになっていた。
（もし目の前に現れたら……俺はアイツのコト逃がしてやれんのかな……）
　それとも……。
　葛藤が胸の中に渦巻く。
　大きなボルトの刺さった重たい頭をゆるりと振ってそんな悩みを振り落とそうとしたそのとき、薔薇の茂みの影から、そのマリアが現れた。

「オマエなぁ……。なんで俺のトコに来ちまうんだよ……」
　嬉しくないなんて言ったらうそになる。けれど言葉は裏腹に、彼女を邪険にしてしまう。
　その黒髪に手を伸ばそうとして、けれど拳を握って堪える。
　そんな春彦にマリアは言った。

「あなたが好き。……Kiss or Treat？」

「家に帰りたくねーの？　人生捨てんのかよ？」
「家に帰りたくないわけじゃないわ。人生も捨てない。ただ、あたしは選んだだけよ、……あなたを」
　後悔なんてしそうにない、自信に満ち溢れた瞳。理解できない。
（マジでバカだろコイツ……なんでこっちを選ぶんだよ）
　だけど。
　だけど、自分の目の前に彼女がいる。そのことが、すべてを凌駕してしまう。
　
「あー、クソッ！」
　春彦はマリアの肩を強く掴んだ。
「本当に帰らなくてイイんだな？　どんなに後悔しても後戻りなんて出来ねぇんだぞ」
　頬に触れ、囁くように問いかける。
　脅すような言葉にも、マリアの瞳は揺るがない。
　ははっ、と春彦は喉の奥で笑った。

「もう離してやれねぇから、覚悟しろよ？」

　悪戯っぽい微笑みを浮かべて頬を撫で、撫でた方と逆の頬に口づける。

「これからはずっと一緒だからな」

＜ＨＡＰＰＹ　ＥＮＤ＞