ある日、天から降ってきた『何か』　その３｜リアクション

ある日、天から降ってきた『何か』　その３

【空の戦いと海の戦い】

　サキリがちょうどたどり着いた少し前。
　荒太郎は、くるくると空中に回りながら小型船舶の後へと流されていく。
「うわわわ、バランス！　バランス！」
　姿勢制御をしつつ、視線は船を操縦するブリジットへと向けられる。
「このままだと危ない！」
　そういって、小型船舶に乗り込み、ブリジットに蛇那伊を押していることを説明する荒太郎。
「可能ならこのまま進んで主砲の最小仰角で、砲撃不可能な内側に潜り込みたいところだけど……」
「いや、船止めようよ！」
「それは、そのまま撃たれてお終いよね……」
　どうするかと思案するブリジット。
　だが、荒太郎の言うことを聞いてここで蛇那伊一人のためにストップして、彼のフォローしている紫鶴を含めて4人とも砲撃に巻き込まれては、この小型船舶が小さく、至近距離は当たりにくいとはいえ、万が一ということもありうる。
（さて、どうしたものかしら？　このまま突っ走ってぎりぎりで停止させたほうが面白……ではなく、理にかなっているわね……何かがおかしいけど気にしない、気にしない）
　そう考えると荒太郎に向かって言う。
「聞くところによれば、戦艦は自分の足元が完全な死角なの。そういうのを守るのは本来随伴する護衛の駆逐艦などの仕事だ、ってグランパも言っていたわ。幸い今回は単艦だから、相手の目の前を飛んで、目をそらしてもらえれば、その足元になんとか接近できると思うわ」
「わかった！」
　そう言って、荒太郎は外に飛び出す。
「……クレイジー」
　去り際に、ブリジットがため息を吐いて首を振った。
（海岸側の戦艦の艦首方向から接近して、見張りの注意を引きつけるように動いて、攻撃はＳ字航行で回避というプランが……微妙な変更が必要ね）
　このまま荒太郎を敵の囮にし、そのまま自分は出来るだけ速く接近し旋回しつつ、艦首方面へと抜ける、そしてそのまま砲に対しての囮になる。
　といったところだろう。

「ほわぁぁぁぁっ！」
「沈むよね……お、重い。くっ……」
　なお、蛇那伊は全力で水上を走り、紫鶴は囮役を行うどころか、蛇那伊が船に引き倒されたり、そのまま沈まないように必死に支え続けるのであった。

　そうこうしていると、戦艦の腹部が見えて、蛇那伊は紫鶴に抱えられて、なんとか船の上に運んでもらう。
「とうっ！」
「あ、勝手に降りたら……」
　甲板が見えたところで、蛇那伊は飛ぶ。紫鶴はとっさに手を放し、蛇那伊は甲板に降り立ったかのように見えた……が。
「ぐあっ！」
「あら、何か踏んだかしら？」
　蛇那伊はサキリが瞬間移動してきたところに降り立ったのであった。
「どけっ！　重い！」
「あら、失礼ね」
　ぷりぷりと怒りつつ、蛇那伊は素直に退く。
　こうして、サキリと蛇那伊は甲板に降り立ち、ブリジットは戦艦の船首へと船を動かした。そして、紫鶴と荒太郎は囮へと回るのであった。