- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
供物 ～らっかみさんらっかみさんお越しください！～
◆クッキングの合間に
「こんにちは、アンディさん」
手早く試作品を作り上げた御鏡 聖は、昼休みの間に一度アンディを訪ねていた。
聖が作ったものは――
「sandwich？」
「はい。スパイシーと言うことなのでチキンと挽肉を、胡椒や唐辛子などの香辛料で味付けして、挟んでみました」
瑞々しいレタスの上で、まだ湯気を立てているチキンと挽肉からは聖の言うようになんとも言いがたい香ばしい匂いが漂っている。
パンは市販のものだがフワフワ具合は問題無いだろう。
食べやすいように一口大に切ってあるサンドイッチは可愛らしい楊枝で崩れないように留められており、聖はその中のひとつをつまみ上げた。
「アンディさん、こんな形の料理でしたか？」
「ウーン」
アンディの答えは曖昧で、やはり実際に食べて確かめるしかないのだろう。
「では、味見してみてください」
そう言って聖はアンディにサンドイッチを手渡そうとするが――スカッ、何度挑戦しても聖の手も、サンドイッチもアンディを通り抜けてしまう。
「……おかしいですね、クッキーを食べたと聞いていたのですが」
召喚の際の供物と、今作った料理とでは何か条件が違うのだろうか……。
アレコレ試行錯誤を繰り返すも、聖ひとりでは解決できそうになかった。
「ソーリー、ヒージーリ」
「いえ、気にしないでください。……放課後までに考えておきます」
（……味見をしてもらいながら、近づけていこうと思ったのですが）
ピリリとした香辛料の香りが目に染みる。
生理的に浮かぶ涙を拭い、聖はにっこりと笑みを浮かべた。
「それよりも、少しお話しませんか？」
「オ、話」
アンディは不思議そうに首を傾げるので、聖はもう一度繰り返す。
「はい。最初に質問攻めにしてしまいましたが……今度はもう少し普通に、お話をしてみたいと思いまして」
「オーイエス、イエス。オ話」
アンディが満面の笑みで肯定したため、さっそく聖は話を振ってみた。
「幽霊さんは出身はこちらではないと思うのですが出身はどこの国ですか？……ってなんだか質問みたいですね」
「ヒージーリ、小サイコト、気ニシナイ」
「ありがとうございます」
「デモ、ゴメンネ。アンマリ、ワカラナイ。覚エテナイ」
「……そう、ですか」
思い出の料理の名前もわからなかったのだ。他の生前記憶が曖昧でも、致し方ないというものだろう。
「ヒージーリ、ハ？」
「私、ですか？ 私は……水鏡神社という神社に生まれました」
「ジンジャ？」
「ええ。神様をお祀りしている場所ですよ。えっと、キリスト教でいう教会みたいなものでしょうか？」
「オーナルホドー、スゴイネ、立派ネ」
「立派、ですか？」
立派と言われると聖はなんだか少し違うような気もしたが、妙にアンディが嬉しそうに笑うため特に否定をすることなく頷いておいた。
「ヒージーリ？」
「いえ、立派かどうかはわかりませんが……そう言ってもらえるような巫女になれるように勉強中なんです」
「ヒージーリ、スゴイ。カッコイイネ！」
「ありがとうございます。アンディはどんな事をしていたんですか？」
「車、造ッテタヨ」
「車ですか？」
「イエース。ジャパニーズ、フレンズ、一杯！ ダカラ、ニッポンゴ、話セル」
「そうだったんですか……」
日本の友達が多くて、自動車製造業に携わっていたということは、日系の自動車工場で働いていたのだろう。
日本へ来たのはその仕事が理由なのかもしれない。
「ミンナ、イイ人ダッタヨ。……アンマリ、覚エテナイエド」
「……元気、シテルカナ」
ここに来て初めてアンディの肩が小さく震えた。
（幽霊として出てこられたのですし、きっと何か未練があるのでしょうね）
アンディは見る限り寿命で亡くなったとは思えない若さだ。
とすると病気なのだろうか。
聖の脳裏に白い壁がフラッシュバックする。
幼少時に身体が弱く、幾度も入退院を繰り返していた聖。
その苦しみと同じとは言わないが、やはり重ねてしまう部分もある。
（病気と決まったわけではありません。もしかしたら事故かもしれませんし。
おそらくこの島で亡くなられたと思うのですが……）
未練や無念の話をするのは辛いことだ。だが話す事で救われることもある。
アンディの場合はどちらだろうか。
聖はアンディの横顔をじっと見つめる。
しばらく見つめていたものの、悲しいとも悔しいともつかない静かな面持ちのアンディはそれ以上口を開こうとはしなかった。
「こんにちは、アンディさん」
手早く試作品を作り上げた御鏡 聖は、昼休みの間に一度アンディを訪ねていた。
聖が作ったものは――
「はい。スパイシーと言うことなのでチキンと挽肉を、胡椒や唐辛子などの香辛料で味付けして、挟んでみました」
瑞々しいレタスの上で、まだ湯気を立てているチキンと挽肉からは聖の言うようになんとも言いがたい香ばしい匂いが漂っている。
パンは市販のものだがフワフワ具合は問題無いだろう。
食べやすいように一口大に切ってあるサンドイッチは可愛らしい楊枝で崩れないように留められており、聖はその中のひとつをつまみ上げた。
「アンディさん、こんな形の料理でしたか？」
アンディの答えは曖昧で、やはり実際に食べて確かめるしかないのだろう。
「では、味見してみてください」
そう言って聖はアンディにサンドイッチを手渡そうとするが――スカッ、何度挑戦しても聖の手も、サンドイッチもアンディを通り抜けてしまう。
「……おかしいですね、クッキーを食べたと聞いていたのですが」
召喚の際の供物と、今作った料理とでは何か条件が違うのだろうか……。
アレコレ試行錯誤を繰り返すも、聖ひとりでは解決できそうになかった。
「いえ、気にしないでください。……放課後までに考えておきます」
（……味見をしてもらいながら、近づけていこうと思ったのですが）
ピリリとした香辛料の香りが目に染みる。
生理的に浮かぶ涙を拭い、聖はにっこりと笑みを浮かべた。
「それよりも、少しお話しませんか？」
アンディは不思議そうに首を傾げるので、聖はもう一度繰り返す。
「はい。最初に質問攻めにしてしまいましたが……今度はもう少し普通に、お話をしてみたいと思いまして」
アンディが満面の笑みで肯定したため、さっそく聖は話を振ってみた。
「幽霊さんは出身はこちらではないと思うのですが出身はどこの国ですか？……ってなんだか質問みたいですね」
「ありがとうございます」
「……そう、ですか」
思い出の料理の名前もわからなかったのだ。他の生前記憶が曖昧でも、致し方ないというものだろう。
「私、ですか？ 私は……水鏡神社という神社に生まれました」
「ええ。神様をお祀りしている場所ですよ。えっと、キリスト教でいう教会みたいなものでしょうか？」
「立派、ですか？」
立派と言われると聖はなんだか少し違うような気もしたが、妙にアンディが嬉しそうに笑うため特に否定をすることなく頷いておいた。
「いえ、立派かどうかはわかりませんが……そう言ってもらえるような巫女になれるように勉強中なんです」
「ありがとうございます。アンディはどんな事をしていたんですか？」
「車ですか？」
「そうだったんですか……」
日本の友達が多くて、自動車製造業に携わっていたということは、日系の自動車工場で働いていたのだろう。
日本へ来たのはその仕事が理由なのかもしれない。
ここに来て初めてアンディの肩が小さく震えた。
（幽霊として出てこられたのですし、きっと何か未練があるのでしょうね）
アンディは見る限り寿命で亡くなったとは思えない若さだ。
とすると病気なのだろうか。
聖の脳裏に白い壁がフラッシュバックする。
幼少時に身体が弱く、幾度も入退院を繰り返していた聖。
その苦しみと同じとは言わないが、やはり重ねてしまう部分もある。
（病気と決まったわけではありません。もしかしたら事故かもしれませんし。
おそらくこの島で亡くなられたと思うのですが……）
未練や無念の話をするのは辛いことだ。だが話す事で救われることもある。
アンディの場合はどちらだろうか。
聖はアンディの横顔をじっと見つめる。
しばらく見つめていたものの、悲しいとも悔しいともつかない静かな面持ちのアンディはそれ以上口を開こうとはしなかった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2015年09月05日
- 参加申し込みの期限
-
- 2015年09月12日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2015年09月12日 11時00分
