「らっかみさん、らっかみさんお越しください」
昔から寝子島に住んでいる人ならば一度は耳にしたことがあるフレーズだろう。あるいは、口にしたこともあるかもしれない。
簡単に説明すると、日本の本土の方で『こっくりさん』や『エンジェルさん』の名前で親しまれている、少し魔術めいた遊びのことである。
五十音と数字、それから『はい』『いいえ』を記した紙の上をコインや鉛筆でなぞっていくことで占いをする遊びで、小中学校に在学中に一度は流行りが訪れるのではないだろうか。
夕日の差し込む寝子島高校の一室。
そこで、今日もその『遊び』が繰り広げられていた。
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「ふふふ、今日こそ、今日こそ、今度こそ! 私らっかみサマと相まみえるのよ!」
遊びにしては真剣な面持ちをした彼女の名前は神辺 こゆみ(かんなべ・こゆみ)。
彼女は落神信仰を深く深く信仰しているということ以外はごく普通の少女である。ただ、そのたったひとつの部分が厄介なのだけれど。
「この間は失敗してしまいましたが、今度はそうはまいりません!」
失敗したくらいでへこたれるこゆみではない。
「らっかみサマ。こゆみはらっかみサマに早くお会いしとうございます……」
胸の前で手を強く強く結んで、祈るように五十音の紙にすがった。
繰り返すが彼女はもれいびではないため、テオの存在には気がついていない。
そして、
野々 ののこの存在にも気がついていない。
そのためなんとかしてらっかみに会おうと、こうしてたびたび遊びのらっかみさんを行うのだ。
「ふふふ、今度こそ成功するに違いありませんわ!……なんたって、私は最終兵器を用意してきたのですから!」
最終兵器。その正体は――
「贄! すなわちお供え物!!!!」
ドヤとこゆみは手作りのクッキーを天に捧げ、
「申し訳ありません、らっかみサマ。らっかみサマをお慕いするあまり、まわりが見えておりませんでした。こんな当たり前の配慮に欠いていたなんて……ああ、こゆみ、悪い子!」
と自分の世界へと入ってしまった。
「お役に立てたかな?」
そんな彼女を現実世界へと連れ戻したのは、小首を傾げる
アリシア・エーゼルベルク。彼女こそこのフロレシアン・クッキーの作り主である。そう。手作りしたのはこゆみでなく彼女。
「ええ、素晴らしい供物をありがとうございます!!!」
「喜んでもらえてよかった。神辺さん、これも、日本の文化なのよね?」
「ええ、ええ、もちろん! らっかみサマを愛するのは日本人なら当たり前のことです!
さ、では、ジャパニーズ文化をどうぞご体験ください!!」
こうして、こゆみに乗せられ、アリシアはらっかみさんを呼び出す手伝いをさせられたのである――。
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「「らっかみさん、らっかみさんお越しくださいッ」」
声を揃えて名前を呼ぶともくもくもく。怪しげな煙が上がり、その煙の奥にのっそりと大きな影が浮かび上がる。
「この方が、らっかみさん?」
アリシアが目をキラキラと輝かせて、煙が引くのを待つ。
そうして現れたのは――
「美味シイ、クッキー、サンクス。メルシー」
ムキムキ、ゴリゴリ、かなりマッチョの(例を挙げるならば、
富士山 権蔵先生よりもマッチョ)黒人男性。けっこう日本語はお上手。
「え、っと、あなたがらっかみサマ?」
こゆみが恐る恐る尋ねるが、男はオーマイガーとでもいうように、悲しそうに大きく首を振る。
「違ウ」
やっぱりかという悲壮感がこゆみに漂う。が、男は気にせず言葉を続けた。
「コノ、クッキー、ワタシ、ノ、食ベタイモノ、違ウ」
「へ?」
「ワタシ、忘レラレナイ。心ノコリ。アレ、食ベタイ。
アレ、ナイト、ワタシ、帰レナイ。……帰リタイ」
「それは、なんていう料理ですの?」
「忘レテシマタヨ。……確カ、ふわふわデ、スパイシー、デ、ナンテイウノ?バニーちゃん、的ナ?
キュート、カワイイ。ア、栄養マンテン、テ、ママン、言ッテタ」
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この日から、寝子島高校で怪しげな黒人が目撃されるようになった。
それは幽霊だとも、理事長の
ヒモ ストーカーだとも、サンマさんの中身だとも噂されているが――真実はかくのようであった。
まずはガイドに登場してくださいましたアリシア・エーゼルベルク様、ありがとうございました。
イラストもお借りしております。この場を借りて、御礼申し上げます。
※ガイドでも霊感の有無は言及しておりません。ご参加いただいた場合は、霊感は好きに設定してください。
さて、今回のシナリオは『思い出の料理』がテーマです。
誰しも、思い出の味ってありますよね。
例えば、おばあちゃんが作ってくれたお味噌汁とか、海外旅行に行った時に食べた不思議な現地料理とか。
皆さんの思い出の料理も気になるところですが、今回はある男性を救うために思い出の料理を作ってあげてください。
お願いします。
※もし、成仏させてあげられない場合は、この幽霊は寝子島高校に住むことに……?※
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【概要】
『らっかみさん』によって無理矢理呼びだされた幽霊さんは、
<思い出の食べ物>を食べないかぎり、
<帰れない=成仏できない>そうです。
つまりその間、寝子島高校に、居着きます。
イヤですよね。
イヤじゃない?
だとしたら、巻き込まれた幽霊さんは可哀想ですね。
ところが、その『思い出の料理』が<なんの料理かわかりません>。
そこで、<推理をして>、『思い出の料理』を<作ってあげてください>。
どうぞ、よろしくお願い致します。
▽できること
●料理を捧げる:
料理を推理して、用意して、捧げます。
●その他:
このシチュエーションに関係のあることなら、構いません。
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【霊感について】
このシナリオ上は霊感の有無を設定していただけます。
【話せる/見える/感じる/見えない】
など、各自お好きに設定してください。
ちなみにこの幽霊はものに触れたり、ものを食べたりできます
人によっては、幽霊と気が付かないかもしれません。
人によっては、ポルターガイストです。
そのあたりを意識して設定すると楽しいかもしれませんね。
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【その他】
コメントページに質問を書いてくれれば、
神辺 こゆみを通じて、<幽霊が質問に答えます>。
<9月8日(火)24時までにきた質問(1PCにつき1回のみ)に対して、9月10日(木)24時までに回答します。>。
ただし質問したところで、ガイドで料理の名前を答えられなかったように、うまく答えられない場合があります。
その点のみ、ご了承ください。
寝子島高校在校生以外も、相談を受けて、お料理を考えてもらっても構いません。